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2025年5月17日(土)

通称で十分? 子がかわいそう? 戸籍が壊れる?

こたえは法務省パンフに

審議会答申で解決済み

図

 1996年9月に法務省民事局が出版した小冊子『選択的夫婦別氏制度について(夫婦別姓選択制度)』は、法制審議会と民事行政審議会(ともに法相の諮問機関)が同年に答申した民法改正案を、国民に説明した資料です。

 選択的夫婦別姓制度に反対する勢力は、「旧姓の通称使用で十分」とか「親と子の姓が別々になるからかわいそう」「戸籍が壊れる」などといっています。これらの主張を退ける事実を分かりやすく説明しているのが、法務省民事局の小冊子です。

旧姓の通称使用

 小冊子は、「旧姓を通称として使用できるようにすれば十分ではありませんか」との問いをたて、次のように答えています。

 1、社会活動を行う上で旅券・免許の取得、納税・年金などの公的手続きが必要になります。その場合は、最終的には国民の身分関係を公証する戸籍に記載された氏名によることが要求されます。

 2、旧姓を通称として使用することを所定の方法で届け出ることにより、旧姓を公的な場面でも使うことができるようにする方法も考えられます。しかし、この場合、戸籍姓と旧姓とを併用できるとすると、逆に社会から見てその人が誰かということが分からなくなり、混乱を招く恐れがあります。例えば、一方では戸籍姓を用いて、他方では通称を用いて免許などを取得し、それを悪用して別人のように振る舞って他人に損害を与えるようなことも起きる可能性があるから、このような方法を採ることは適当でないと考えられます。

 3、旧姓を通称として使用することを認めるだけということにすると、通称はその人一代限りのものとなり、子どもに引き継がせる余地はなくなるので、家の名前として姓を残したいという人たちにとっても、その希望に十分こたえたものとはいえないことになります。

子の姓どうなる

 法制審議会の答申では、夫婦が別姓で結婚する場合、結婚の時に、夫の姓か妻の姓かいずれか一方を夫婦間の子の姓と定めるとしています。

 結婚後に夫婦の間に生まれた子どもは、その夫婦が結婚時に子の姓として決めた姓を名乗ることになります。きょうだいの間では、同じ姓を名乗ることになります。

 図(選択的夫婦別氏制度導入後の家族の姓の決め方)を見てください。

 結婚の際の取り決めは、夫婦が同じ姓を名乗る場合と、各自が結婚前の姓を名乗る場合で違います。

 夫婦が同じ姓を名乗る場合は、夫婦が夫の姓を名乗るのか、妻の姓を名乗るのかを決めます。

 各自が結婚前の姓を名乗る場合は、夫婦間の子の姓を取り決めます。夫の姓を名乗るのか、妻の姓を名乗るかを決めます。

 次に、婚姻届を出し、子の出生(子の姓を決める)という場面はどうでしょうか。別姓夫婦の子も、同姓夫婦の子も、妻(子の母)の姓を名乗るか、夫(子の父)の姓を名乗るかであり、子の姓の決め方に違いはありません。

 別姓夫婦の子を特別視して「かわいそう」などという根拠は、もともとありません。

戸籍の範囲同じ

図

 現在、戸籍は、夫婦と、夫婦と同じ姓を名乗る子を一つの戸籍として編製し、夫婦が夫の姓を名乗るときは夫を、妻の姓を名乗るときは妻を戸籍の最初に記載しています。

 選択的夫婦別姓が導入されても、夫婦が同じ姓を名乗る場合には、戸籍は現在とまったく変わりません。

 民事行政審議会の答申では、夫婦がそれぞれ結婚前の姓を名乗る場合でも、夫婦と、夫婦の一方と同じ姓を名乗る子を一つの戸籍として編製するとされているので、一つの戸籍に記載されることになる方の範囲は、現在とまったく同じになります。

 また、夫婦がそれぞれ結婚前の姓を名乗る場合には、夫婦間の子の姓として定めた姓を名乗る方を戸籍の最初に記載するとされています。例えば、「田中」さんと「山田」さんが、別姓で結婚した場合、子の姓を「田中」と決めたときは「田中」さんを、子の姓を「山田」と決めたときは「山田」さんを戸籍の最初に記載することになります。

 選択的夫婦別姓制度をめぐる論点は、法制審議会と民事行政審議会の答申によってすでに解決しています。同制度の実現を拒むための議論の先延ばしではなく、答申を正面においた真摯(しんし)な議論が求められています。


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