2025年5月13日(火)
昨年 経済的理由で受診遅れ死亡48件
無保険18件 「健康権保障ない」
民医連調査
全日本民主医療機関連合会(民医連)は12日、東京都内で記者会見を開き、無保険や保険があっても経済的な理由から受診が遅れて死亡する事例が2024年に全国の民医連の事業所で48件あったとする調査結果を発表しました。
![]() (写真)「経済的理由による手遅れ死亡事例調査」の結果を発表する岸本啓介事務局長(右から2人目)=12日、東京都千代田区 |
調査は民医連の全国692事業所を対象に実施。23都道府県で同事例がありました。無保険は18件、負債がある事例が20件でした。がんが31件。1~2年受診していなかった事例もあり、20件が治療開始から1カ月以内で死亡していました。
重い熱中症で搬送された翌日に死亡した50代の土木作業員の男性は、無保険状態で所持金は2888円でした。受診した数カ月前に契約社員として就職していましたが、月10日間以上働く条件があり寮費は給与から天引き。国民健康保険証は期限切れで、経済的に保険料負担が困難でした。仕事を休むと寮費が支払えなくなるため、前日に熱中症症状があったにもかかわらず受診を控えたとみられます。
日払いで建設会社で働いていた60代男性は23年に膀胱(ぼうこう)がんを手術。抗がん剤治療が必要でしたが経済的な理由で、退院以降は受診していませんでした。その後、実家で衰弱して入院。全身にがんが転移し、急変して死亡しました。高額療養費限度額認定制度などの情報が届かなかったとみられます。
岸本啓介事務局長は、無保険が18件で保険料滞納も17件ある実態について「一人ひとりの健康権が保障されていない」と指摘しました。
また、国会で昨年成立した子ども・子育て支援金制度に財源を確保するために、国は医療保険料の値上げを決めたと説明。「今でも払えない人が多いのに引き上げられる。ケアと命が大切にされる社会保障制度へ、財政構造の転換をめざしたい」と話しました。
副会長の柳沢深志医師は、紙の保険証が廃止されてマイナ保険証への移行が進んでいるとして「手続き漏れ等で保険証がないという人が絶対生まれないようにしてほしい」と訴えました。