2025年5月9日(金)
きょうの潮流
ピアノが大好きだった少女はやがて戦争に巻き込まれ、穏やかな日常や大切な人たちの命まで奪われていきます。「ひめゆり学徒」を描いた『ももちゃんのピアノ』です▼モデルとなった与那覇百子さんは16歳の時にひめゆり学徒隊として沖縄戦に動員され、兵士らの看護にあたりました。父と姉2人、多くの級友らを亡くし、昨年96歳で死去するまで平和の語り部として体験を語り続けました▼今年亡くなった玉城節子さんは「ひめゆり同窓会」の会長を10年間務め、追悼とともに平和活動に力を尽くしてきました。血のにじむような証言の数々と平和を希求する活動。その拠点となってきたのが、ひめゆりの塔と平和祈念資料館です▼伝え続けた沖縄戦の実相、平和教育の大切さ。それを知ろうともせず、またあやふやな記憶だけで「歴史の書き換えだ」と言い放った自民党の西田昌司参院議員の暴言は、20万人をこえる犠牲者の無念や体験者の証言を愚弄(ぐろう)するものです▼沖縄を捨て石とし、激しい地上戦に生徒や住民を駆り立てたのは日本軍です。その事実を打ち消し、平和教育への偏見もあらわにした西田氏。ゆがんだ歴史観をもつ人物を沖縄に招き、講演させた自民党の責任も大きい▼沖縄では県民をはじめ、知事や県議会からも怒りや抗議が続々とわきあがっています。西田氏の暴言は沖縄だけでなく、この国の歴史や戦後の教育を否定することにも。それは夢や希望を絶たれた、ひめゆりの人たちが願ってきた平和に逆行するものです。