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2025年5月8日(木)

学術会議解体法案で参考人質疑

衆院内閣委 意見陳述の要旨

 衆院内閣委員会が7日行った学術会議解体法案についての参考人質疑での梶田隆章・前日本学術会議会長と福田護・日弁連憲法問題対策本部副本部長が行った意見陳述の要旨は次の通りです。

前日本学術会議会長 梶田隆章氏

 日本学術会議は2021年4月22日の総会で「日本学術会議のより良い役割発揮に向けて」を決定しました。現行の日本学術会議の設置形態はナショナルアカデミーの5要件を満たしており、変更する積極的理由を見いだすことは困難と結論しています。

 日本学術会議は新しい日本学術会議法を求めたことはありません。現行の日本学術会議法の前文は、法案からなくなり、「科学者の総意の下」の文字も消えています。「科学者の総意の下」と言えない組織が科学者の賛同を得て学術的に国を代表する機関なのか懸念があります。

 日本学術会議との真摯(しんし)な協議を欠き同意を得ないまま、独立性や自律性に多大な影響を与えうる組織選考などを変更し法定化すること自体がナショナルアカデミーの独立性、自律性を脅かす懸念があります。

 現在の日本学術会議法は、独立してその職務を行うとして「独立」が明記されていますが、法案では「独立」の文字は消えています。運営における自主性、自律性は配慮義務にとどまっており、独立性への懸念があります。

 昨日、国際学術会議から、日本政府による日本学術会議の運営と会員選考の手続きに干渉しようとする度重なる試みに対し深い懸念を表明するとのメッセージを受け取りました。

 第25期学術会議では、会員選考方針を自律的に定め、新会員の選考対象者をより広くから求めました。選考には年齢、ジェンダー、地域などの多様性にも配慮するなど、改革を進めながら行いました。

 法案では、新たな法人発足時の会員選考に特別な選考方式が法定されています。発足時に特別な選考を行わなければならない理由はなく、極めて不自然な選考方式で懸念があります。通常時の会員選考では、会員以外から構成される選定助言委員会が選定方針のみならず、候補者選定についても意見を述べることができるとされています。候補者選定は特定の外部の影響を受ける懸念があります。

 法案は、日本学術会議が求めているナショナルアカデミーの5要件と、日本学術会議の機能強化に資するものかどうかの点で懸念が拭えません。

 日本学術会議がより良く役割機能を果たす観点から法案の再検討を強く求めます。性急な改革が学術に大きな混乱をもたらす懸念は、他国の例でも明らかになりつつあると思います。

日弁連憲法問題対策本部副本部長 福田護氏

 日弁連は学術会議法案に反対の会長声明を発しております。法案は憲法23条が保障する学問の自由に対する脅威だと思います。

 一つは法案自体の内容です。法案では、新法人には全て会員等以外の外部のもので構成をされる選定助言委員会、運営助言委員会、監事、日本学術会議評価委員会の各機関が設置されます。監事と評価委員会は総理大臣が任命し、評価委員会は内閣府に置かれます。政治権力からの自律と独立が格別に求められるナショナルアカデミーとしての科学者集団に、政府による監督システムを持ち込むことが適切なのかと疑問を感じます。

 また本法案では、新法人の会員選任は、選定助言委員会の意見を聞いた上で作成される選定方針に従い、会員候補者選定委員会が会員のほか、多様な関係者からの推薦に基づいて、多様な実績のある科学者を含める等の配慮の下、選定すべきと定められています。会員選定の実質的な判断を制約し、会員の推薦を基本に学術会議が自ら基準を定め会員候補者を選定してきた「コ・オプテーション」方式を制約するものと言えます。問題なのは新法人の発足にあたり「コ・オプテーション」が基本的に排除されます。特別な候補者選考委員会が設置され、委員は内閣総理大臣が指定する者との協議で決定され、会員以外の者で構成できるようになり、会員候補者について現行会員の推薦権は否定されます。人事の自律性を否定し政府から独立し科学的助言を行ってきた従来の学術会議との連続性を遮断するものです。

 もう一つは立法事実に関する点です。首相は2020年10月、学術会議が推薦をした会員候補者6人を任命拒否しました。任命制が導入以降40年近くにわたり首相の任命は形式的で、学術会議から推薦された候補者の任命を拒否しない定着した政府解釈を覆すものです。政府はその意思決定の説明責任を果たさぬまま、逆に学術会議の在り方を問題にし、今回の法人化法案に至っております。

 政府は学術会議の独立性の徹底を立法理由にしていますが、私どもは十分に独立性を維持していると考えます。先の会員任命拒否に対し、学術会議が理由の説明と速やかな任命を求め続けていることで明らかですし、例えば防衛装備庁が進める安全保障技術、研究推進制度への慎重な対応を求めた軍事的安全保障研究に関する声明に表れています。独立性の徹底は、立法事実たり得ないと考えます。


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