2025年5月8日(木)
主張
選択的夫婦別姓
賛成議員多数 今国会で実現を
後半国会で選択的夫婦別姓制度を実現することができるか、熱い焦点です。立憲民主党は4月30日、制度導入のための民法改正案を衆院に提出し、日本共産党はただちに賛同の立場を表明しました。
■姓名は人生の象徴
法制審議会(法相の諮問機関)は1996年、選択的夫婦別姓導入を答申しました。しかし自民党などの反対で約30年棚ざらしにされてきました。昨年の総選挙の結果、衆参で同制度に賛成の立場の議員が多数となりました。「今国会で実現を」の声に立法府はこたえる必要があります。 姓名は個人がそれまで生きてきた人生の象徴、個人のアイデンティティー(自分が自分であるという認識)であり変更を強制されないことは人格権の大事な一部です。衆院に提出された民法改正案は、夫または妻の姓を名乗る(同姓)か、各自が結婚前の姓を名乗る(別姓)か、を選べる制度です。別姓の場合は結婚時に子どもの姓を定めるとしています。96年の法制審議会の答申をもとにしています。
選択的夫婦別姓に反対する勢力は、「親と子の姓が別々になるからかわいそう」「家族の一体感が失われる」と主張します。しかし、日本でも国際結婚や事実婚、旧姓の通称使用などで両親の一方と姓が違う子どもは多数います。日本以外の国では別姓を認めており、親と子で姓が違っても問題は起きていません。
政府も「夫婦別氏制度導入で子どもに悪影響があることを証明する情報には接していない」(三原じゅん子こども担当相、3月27日参院予算委員会)と認めます。
自民党や維新の会は、「旧姓を通称として使えるようにする」として、選択的夫婦別姓導入に反対しています。
国民民主党の玉木雄一郎代表は以前は「導入しない理由を見つけるほうが難しい」とし、昨年の総選挙でも同党は導入が公約でした。しかしここにきて同氏は「家族の一体性は重要」として維新同様、通称使用の法制化の考えを示し制度導入に後ろ向きです。
■通称では解決せず
通称使用は、カップルの一方の改姓を前提とするもので、人生の象徴としての姓名の喪失感という大本は解決しません。むしろ戸籍姓と旧姓との併用は、社会から見て、その人が誰かということに混乱を招く恐れがあります。
法制審議会の答申に至る中間報告は、旧姓の通称使用の法制化は「採用しない」という結論を出しています。
市民団体の調査では、事実婚を選んだカップルの約3割が「改姓を望まない」ことを理由にあげています。特に20代では約4割にのぼります。選択的夫婦別姓制度の導入で法的な利益を受ける人が増える可能性を示唆しています。
経団連や経済同友会など経済界も早期導入を政府に要望しています。世論調査では7割以上が選択的夫婦別姓制度の導入に賛成しています。
国連の女性差別撤廃委員会からは20年以上前から4回も民法改正の勧告を受け、来年10月までに進捗(しんちょく)状況を報告するよう指摘されています。
国会は選択的夫婦別姓導入に向けた議論に入り、今国会での実現をはかるべきです。