2025年5月8日(木)
きょうの潮流
歌手の宇多田ヒカルさんが曲に思いを込めれば、将棋の藤井聡太さんは賛成の考えを示しました。選択的夫婦別姓を実現することに▼宇多田さんは、新曲「Mine or Yours」で「令和何年になったらこの国で夫婦別姓OKされるんだろう」と歌っています。「私かあなたか」という意味の曲の歌詞には、一緒にいたい相手と、お互いの違いを尊重しながら生きる日常がつづられています▼「同姓か別姓か選択できるということが望ましいだろうと私自身は考えています」。将棋七冠の藤井さんは信濃毎日新聞のインタビューの中でふれました。名前というのは自分自身のアイデンティティーを構成するものでもあるとして▼いつになったら自分の名前で生きる自由が得られるのか―。いま若者をはじめ、各界各層で夫婦別姓制度を実現させようとの声が広がっています。直近の世論調査でも賛成が多数を占め、経済界も政府に早期導入を求めています▼かたくなに拒んでいるのが、家父長的な価値観にしがみつく自民党内の反対勢力です。妻や子どもは無権利状態だった戦前の家制度の下で押しつけられてきた同姓。その時代錯誤をいまだに改めない日本は世界からも取り残されています▼「これこそがジェンダー差別であり、問題の根本です」。この問題を特集した本紙日曜版(5月11日号)で国連女性差別撤廃委員会の秋月弘子委員が強調しています。国が夫婦同姓を強制することは、個人の尊厳を守る人権の考え方に反していると。