2025年5月7日(水)
きょうの潮流
水を養うという森林や草原。降った雨や雪などをゆっくりと地下に浸透させ貯留する涵養(かんよう)の機能は、暮らしに欠かせない水をはぐくむ自然界の営みです▼この貴重な水の供給が、国から巨額の補助金を受けて収益を得る大企業によって脅かされています。製造過程で大量の地下水を使う半導体企業TSMCが進出した熊本では、県が地下水保全の推進本部を立ち上げ対応する事態に▼先月の部会では今年度の地下水位確認の対象となる井戸を4カ所増やして7カ所とし、さらに調整池を活用した人工涵養の試みにも言及。水田に水を張る人工涵養が急速に減少するなど、地下水枯渇への懸念の反映です▼水質への影響も深刻です。半導体工場の稼働後、河川で有害な有機フッ素化合物(PFAS)2種類の濃度が上昇していることが判明。規制の数値より低いとする県に対し住民は使用の禁止を申し入れています▼同じく半導体企業のラピダスが進出する北海道でも、工場用水や排水のPFAS汚染への心配が広がっています。放出される千歳川が下流域の飲料水に使われていることもあり、市民や水産関係者から不安の声があがっています▼PFASを大量に使用する半導体工場は、全国で366カ所にも。共産党の山下芳生参院議員は実態の調査を政府に迫りました。1万種類以上といわれるPFASのうち、日本が規制するのは3種だけ。危険性が確認されるまで待っていたら取り返しのつかないことに―。水俣病以来の公害の痛切な教訓です。