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2025年5月6日(火)

トンネルが生態系破壊

リニア計画 山岳関係者も批判

長野・松本で集会

 南アルプスに長大なトンネルを掘るリニア中央新幹線計画は、奥深い山の自然にどんな影響を与えるのか。4月に長野県松本市で開かれた集会では、ルート上にある沢の遡行(そこう)調査や工事が進む現地の状況などが報告され、計画の問題点を話し合いました。(青山俊明)


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(写真)集会で蛇抜沢の報告をする服部隆さん=4月20日、長野県松本市

 南アルプスは活発な造山活動で無数の断層があり、そこに多くの地下水がたまっていると考えられます。トンネルが断層を貫けば地下水が抜けてしまう可能性があります。

 悪沢岳(3141メートル)が水源で大井川支流の蛇抜(じゃぬけ)沢は真下をトンネルが貫通し、水抜けの可能性が一番大きい。それなのに事業主体のJR東海は現地をほとんど調査していません。

 静岡在住のクライマー服部隆さんは、「それなら実際に登って調べてみよう」と昨年7月、5人で調査。その内容を動画も交えて紹介しました。

 「すごく水の量が多く、鳥の種類も多かった。源流部近くにある天鏡池には多くの動物が水を飲みにきていた。最上部のカールは岩石庭園で高山植物の宝庫だった」と服部さん。映像には側壁の岩の間から水が湧き出している様子も。「抜けた水は回復しない。トンネルは生態系を破壊する。工事を止めないといけない」と強調しました。

ダンプ40~70台

 長野側で工事が始まっている大鹿村住民でジャーナリストの宗像充さんは、隣町まで車で20分ほどの道で40~70台のダンプとすれ違う状況を紹介し、「工事現場の中で暮らしている」と例えます。ダンプの転落事故も昨年は2回起きています。

 当地から出る残土約300万立方メートルは処分場所が決まらず、各地でトラブルも相次いでいます。2027年開業はもともと無理でした。工期の遅れを「静岡県が足を引っ張っている」とする報道に根拠はありません。

 「JRは工事の見通しを『やってみなければわからない』という。駅ができると期待していた地域の人たちも夢破れ、世論も転換点にきている」と宗像さんは指摘します。

美しい沢守って

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(写真)発言する馬目弘仁さん

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(写真)発言する猪熊隆之さん

 集会には著名な山岳関係者も出席。アルパイン・クライマーの馬目弘仁(まのめ・ひろよし)さんは、「ヒマラヤ登攀(とうはん)で敗退が続いたとき誘われた冬の南アルプスは、雪の積もった森林や沢がすごくきれいで癒やされた。山は高く、谷は深く、沢も美しい。守っていかなければいけない」と訴えました。

 山岳気象予報士の猪熊隆之さんは、「森がしっかり保全されているから沢の水量が多い」と語ります。「手つかずの自然が多く残っている日本でも希少な場所だけど問題が世間に知られていない。いろんな人に語っていこう」と呼びかけました。


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