2025年5月6日(火)
年金制度改革法案
給付抑制の仕組み温存
政府、参院選控え提出できず
政府は3月に提出予定だった年金制度改革法案を、いまだに通常国会に提出していません。厚生労働省が検討している法案は、物価が上昇しても年金が自動的に減り続ける「マクロ経済スライド」を温存するもので、提出されれば厳しい批判を浴びるのは必至です。衆院で少数与党の石破自公政権は、夏の参院選を控え、世論を恐れ同法案を出すに出せないのが実態です。
「私どもとして、きちんとした形で出すという方針に変わりはない」―。石破茂首相は4月23日の党首討論で同法案の提出について問われこう答えましたが、具体的な提出時期や法案の中身は示せませんでした。同25日の自民、立憲民主両党国会対策委員長会談で、自民の坂本哲志国対委員長は5月中旬の法案提出を約束しつつ、現時点では法案提出期日の明示には応じられないと陳謝しました。
与野党は同法案を、首相が本会議や委員会の質疑に出席する「重要広範議案」に指定しています。その重要広範議案でさえ提出できない事態に、石破政権の深刻な行き詰まりが表れています。
年金制度改革の最大の焦点は、自公政権が「100年安心」といって導入した「マクロ経済スライド」=年金の実質額を下げる仕組みを続けるかどうかです。「マクロ経済スライド」は、毎年度の年金の改定率を物価や賃金の伸びよりも低く抑えることで、年金給付を抑え込み、目減りさせてきました。
2024年に行われた「財政検証」では、より現実に近い「過去30年投影ケース」の場合、57年度まで「マクロ経済スライド」による調整が続くと予測。基礎年金の調整が今後30年続き、報酬比例年金の額が少ない低年金者ほど年金額が大きく削減されます。
就職難や非正規化が広がった“就職氷河期世代”は10年たつと続々と65歳を迎え、年金給付が始まります。パートや非正規で厚生年金に加入していない期間が長いと、退職後に報酬比例年金が少なく老後の生活が成り立ちません。
厚労省は厚生年金の積立金を活用し、「マクロ経済スライド」を早期に終了し基礎年金を底上げする案を法案に盛り込む予定でしたが、自民党内で反対論が続出し、「十分理解が得られていない」として見送りました。
日本共産党の田村智子委員長は4月24日の記者会見で「今の年金制度が完全に行き詰まっているのが、法案を提出できない一番の理由だ。今まとめようとしている法案は国民の年金不安にこたえるものになっていない。むしろ国民からの批判を大いに受ける可能性がある中身だ」と指摘。年金が自動的に減り続ける現制度を改める必要があるとし、法案提出を待たずに年金制度の構造的な問題点を明らかにする集中審議を行うべきだと主張しました。
日本共産党は同16日に発表した「物価高騰から暮らしを守る緊急提案」で、「マクロ経済スライド」をなくすことで“減らない年金”を保障すると強調。▽巨額の年金積立金を年金の引き上げに活用する▽高額所得者の保険料優遇を見直す▽現役労働者の賃上げと待遇改善で保険料収入と加入者を増やす―など、物価上昇に見合う年金への改革を提案しています。








