しんぶん赤旗

お問い合わせ

日本共産党

赤旗電子版の購読はこちら 赤旗電子版の購読はこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加

2025年5月6日(火)

主張

自社株買い急増

株主最優先のゆがみをただせ

 日本の上場企業の自社株買いが急増しています。自社株買いは、企業が過去に発行した自社の株式を公開市場から買い戻すことです。

 自社株買いは2024年度に過去最多の16兆1549億円にのぼり、23年度の9兆3574億円と比べて6兆7975億円も増えています。(データベース会社のアイ・エヌ情報センター集計)

■株価つり上げ効果

 株は企業が資金を調達するために発行したものです。企業は本来、資本の増加・維持を目指しますが、それをわざわざ買い戻して株式数と資本を減少させるのは、株主の利益となるからです。

 自社株を買うと、市場に出ている発行済み株式の数が減ります。そうすると、その企業があげた利益の額が変わらなくても、1株あたりでいくら利益をあげたかという株主資本利益率(ROE)が上昇します。すると、株式市場でその企業の株式に対する評価が高まり、株価をつり上げます。

 通常の投資では投資家が株を買うことで、株式会社へ資金が流れます。自社株買いによる株の買い戻しは、それとは逆に、株式会社から株主へ資金が流れます。“株主至上主義”を求める海外投資家からの圧力の中、配当に加え、株主への分配として自社株買いが増加してきました。

 株価を都合よく操作できる弊害などから、日本では自社株買いを原則禁止してきました。ところが、小泉純一郎首相(当時)と竹中平蔵経済財政政策担当相(当時)がすすめていた「構造改革」のもと、01年の商法改定で自社株買いを解禁。さらに05年に商法を会社法に改定する中で自社株買いの全面的な規制緩和が行われました。

 自社株買いが内部留保を使って行われることが経営や日本の経済をゆがめています。

■賃上げには回らず

 内部留保などの自己資金が、自社株買いに使われることで、その分、労働者の賃金や設備投資、下請けの単価改善など国内経済の活性化に使えるはずだった原資が減り、経済停滞を招いています。

 24年の自社株買いの上位企業を見ると、1位のトヨタ自動車では自社株買いに使われた資金が1兆724億円なのに対して賃金総額は6319億円、2位の本田技研工業では6635億円に対して2696億円など、上位10社で賃金総額の約2倍が自社株買いに回っています。

 経営者の多くは、報酬として自社の株式を受け取って自ら株主となっており、株主優先の経営をすすめています。

 日本共産党の大門実紀史議員は参院財政金融委員会(3月25日)で、「自社株買いによって、人材や設備投資にお金が回らず、企業が持っている価値や将来性を、株主が奪い取っている」と批判し、経営者も本業の長期的な発展より自社株買いに走り、「経営のゆがみ」が生じていると指摘しました。

 株の配当と違い、自社株買いは株式を売却するまではその利益に課税されません。アメリカやフランスでは、自社株買いへの課税に踏み切りました。日本でも課税を検討すべきです。


pageup