2025年4月29日(火)
主張
トランプ政権100日
広がる抵抗 平和と公正の模索
トランプ政権発足後100日がたちました。世界各国への高関税のふっかけ、国内での異論や多様性の排除など短期間に内外で多くの混乱や軋轢(あつれき)を招いています。一方で、この間の大きな特徴は、国際社会が毅然(きぜん)として対応し、米国内でもさまざまな抵抗が広がっていることです。
世界ではトランプ政権の関税政策に対し、同盟国・途上国を問わず幅広い国々から、自国の経済主権を守る立場での批判が相次いでいます。最近の国連安全保障理事会の非公式協議などの場でも、米国の一方的な貿易措置が国際経済秩序を損なっているとの指摘があがりました。
■米の孤立浮き彫り
パナマ運河の「奪取」、グリーンランドやガザの「所有」など、他国の主権、パレスチナ人民の自決権・人権を平然と侵害するトランプ氏の発言は世界から強い批判を浴び、米国の孤立を浮き彫りにしています。
ウクライナ問題では、国連総会の累次の決議が求める、国連憲章と国際法に沿った公正な原則に基づく解決が危うくされかねないとの懸念が高まっています。
共通しているのは、国際秩序の行方への懸念です。グテレス国連事務総長は、特定の国の単独行動主義に警鐘を鳴らし続けています。
今日の世界は米国一国の大統領の言動で決定される世界ではありません。国連憲章や国際法に基づき、包摂と協力による平和で持続可能な世界の実現に向けた模索と努力が続いています。ここにこそ世界の平和の本流があります。
米国内でもトランプ政権への反発は広がっています。一握りの超富裕層に富が集中する経済構造そのものへの批判が高まり、米資本主義のあり方への問いかけが強まることになりました。
トランプ氏の強権的な統治手法にも批判が集まっています。大学への介入や、政府機関の縮小と職員の大量解雇は大きな抗議と批判を呼び、ハーバード大学が政権を提訴する事態に至りました。各地で市民の抵抗の集会やデモが広がっています。
こうした運動の一つの中心となっているサンダース上院議員は「われわれに必要なのは国民の99%のために働く政府だ」と呼びかけています。
自治体や市民社会からも動きが出ています。高関税政策で農業・工業・消費経済など打撃を受けるいくつもの州が政権を提訴しました。パリ協定離脱では、カリフォルニア州をはじめとする自治体、企業、市民団体が連携して独自の気候変動対策を続けています。
■対米自立求める声
トランプ外交が世界に軋轢を生むなか、石破政権は「日米同盟」頼みに手を付けず、脅しのような米国のやり方に日本だけ“特別扱い”を求める姿勢です。これでは道理にたった外交とはいえません。
トランプ政権の誕生を機に日本の世論は変化をみせています。世論調査では、対米外交について「なるべく自立した方がよい」が68%となりました(「朝日」、27日付)。「日米同盟絶対」で思考停止に陥り、米国の顔色を窺(うかが)い、言いなりを続ける政治からの脱却こそが求められています。








