しんぶん赤旗

お問い合わせ

日本共産党

赤旗電子版の購読はこちら 赤旗電子版の購読はこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加

2025年4月29日(火)

きょうの潮流

 戦後80年、若い世代に戦争と戦場をどう伝えるか。厚生労働省が2006年に開館した、東京・九段にある戦傷病者史料館を訪ねました。「しょうけい館」の看板が目印です▼アジア・太平洋戦争で負傷したり病気になった人たちが体験した、戦中・戦後の労苦を語り継ぐ施設です。「受け継ぎ、語り継ぐ」意味の「承継」を子どもたちにも理解できるように、ひらがな書きで▼3階の常設展示室には、施設も資材も薬品もない洞窟内の野戦病院での看病の様子を、ろう人形の負傷兵士や遺品と遺言で再現しています。「彼はマラリアで衰弱し おぶった彼は綿のように軽かった」「大腿(だいたい)部に貫通銃創を受けた 兵の創口にヨーチンを注ぐと 蛆(うじ)が縄のようによじれて流れ落ちる」の言葉も▼「軍が宣伝する戦場は、実はみじめで陰惨で地獄でした。本人や家族から寄贈された実物資料は大事に保存・活用する歴史資料です」と学芸員の半戸文さん▼義足の右足では自転車がこげないため、左足だけの改良片足踏みペダル自転車。農作業をするために義手の先端に鎌をとりつけた改良作業用義手なども展示されています。「病気し負傷すると戦争が終わっても、生きている限り戦争は続いている。苦労は自分たちで最後にしてほしい」との解説が▼過酷な戦場体験は「戦争トラウマ」として、家族にも向けられました。この夏、“戦場体験によるPTSD”という兵士の「心の傷」の実態調査の展示も。戦争は起こさせない誓いの空間がひろがります。


pageup