2025年4月28日(月)
きょうの潮流
開幕を待っていたかのように始まりました。大阪・関西万博の会場で。日本初のカジノを中核とする統合型リゾート(IR)施設の本格着工です▼吉村洋文・大阪府知事は「世界最高水準のIRが夢洲(ゆめしま)にできる」と得意げに。「経済活性化の起爆剤」として人心を荒廃させるギャンブルを利用するところに、推進してきた維新の会の性根がのぞきます。しかも「公衆の教育」を目的とし、「人類の将来を示す」と定義される万博を呼び水にして▼万博研究者の佐野真由子・京大教授は、こんな指摘をしていました。「今回は、万博の意義を十分理解し、そのために多額の税金を投じることも覚悟して開催権を取ったという印象はありません」▼「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマにしながら、逃げ場のない人工島に大勢を集める。爆発濃度のメタンガスが発生する。夏場に向けて熱中症のリスクも高まる。「いのちを救う」どころか、多くの命を危険にさらしたままの開催です▼見せかけのテーマは、この万博自体がカジノのために招致されたことにも。デジタル化を勧めているのにスマホの充電ができない、案内がわかりにくい、食べ物が高い…。来場者に優しくない運営面の問題も相次いでいます▼時代ごとの国や社会を映す鏡といわれた万博の歴史。科学技術の進歩や夢を描くことで耳目を集めてきました。それは本来、命やくらしの豊かさにつながるものであったはず。しかし変わりゆく夢洲の姿から、そんな未来は見えてきません。