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2025年4月15日(火)

OTC類似薬 自公維狙う

保険外しは命に関わる

難病患者「薬代負担耐えられぬ」

 自民、公明、日本維新の会の3党が国民医療費の「最低4兆円削減」などで合意し、市販薬と効能が同じ「OTC類似薬」を保険適用から外そうとしています。患者からは「保険適用から外れれば、薬代の負担に耐えられず、日常生活が送れなくなる」といった声が上がっています。(田中真聖)


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(写真)「患者の声に耳を傾けてほしい」と語る山田裕樹さん(仮名)

 埼玉県内に住む会社員の山田裕樹さん(22)=仮名=は、生まれつき全身の皮膚が乾燥してうろこのように硬くなる「先天性魚鱗癬(ぎょりんせん)」を患っています。発症の原因は不明で、治療法が確立されていない難病です。国内の患者はわずか200人ほどです。

痛みで動けず

 皮膚が正常に機能しないため、朝晩の入浴後には必ず全身に保湿剤を塗布。体温調節が難しく、夏場は屋外で少し動いただけでも体温は38度を超えてしまいます。冷房が利かない場所での活動はできません。気温の変化や空気の乾燥などによっては症状が悪化するといいます。

 「症状がひどいときは内側から引き裂かれているような痛みです。小学生の頃は浴室から出る際に、あまりの痛さに動けなくなることもありました」

 数多くある難病のうち、医療費助成の対象疾病の患者で一定の症状がある人は、月の自己負担上限額が所得に応じて決められています。山田さんの場合1万円。2~3カ月に2回の頻度で通院します。診察料(薬代を含む)の自己負担額は1回2500円前後です。保湿剤は頭から足先まで全身に塗るため、50グラムの「ヘパリン」はわずか1カ月で30本以上消費します。OTC類似薬が保険適用外になれば、難病の医療費助成制度からも外されてしまいます。薬代だけで1回6万円超の負担になるといいます。

 山田さんと2人で暮らす母の山田京子さん(47)=仮名=は、体温調節や皮膚の保湿のほか、保湿剤が衣類に付着するため、1回の洗濯で3回も洗濯機を回しています。薬が保険から外されたら、家計への影響が大きいと危機感をあらわにします。

 「物価高騰で実質賃金が追いつかなくなる中で、OTC類似薬の保険適用が外されれば、生活ができなくなる」

ネットで署名

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(写真)山田さんがおもに使っている保湿剤やアレルギー反応を抑える薬

 日本難病・疾病団体協議会(JPA)の大坪恵太事務局長は、リウマチや魚鱗癬などの慢性疾患患者は長期的にOTC類似薬を使っている人が多いとした上で、「政府はOTC類似薬を使っている人の実態や患者の状況に耳を傾け、見直しは慎重に検討されるべきだ」と話します。

 患者の声を聞いてほしい―。山田さんは高額療養費制度の負担上限額引き上げをめぐり、がんの当事者ら患者団体からの猛批判で政府が引き上げを断念したことを挙げ、オンライン署名を立ち上げました。

 「私のように薬代を節約しようとすると、病気が悪化し、生死の境に立たされる。誰もが安心して暮らせるよう、保険適用から外さないでほしい」と訴えます。

 OTC類似薬 薬局やドラッグストアなどで直接購入できる医薬品(OTC医薬品)に似ていて処方箋が必要とされる医薬品。保険が適用されます。OTCはカウンター越しで売買するという意味の英語「Over TheCounter」の頭文字。山田さんがおもに使う「ヘパリン類似物質(ヒルドイドローション)」などの保湿剤やアレルギー反応を抑える薬なども含まれます。


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