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2025年4月9日(水)

「能動的サイバー防御」法案

塩川議員の反対討論(要旨)

衆院本会議

 日本共産党の塩川鉄也議員が8日の衆院本会議で行った「能動的サイバー防御」法案についての反対討論の要旨は次の通りです。


 反対理由の第一は、「通信の秘密」を根本から覆す違憲立法だからです。

 本法案は、サイバー攻撃の実態把握を口実に、送受信者の同意もなく、政府が電気通信設備から通信情報をコピーでき、自治体を含む基幹インフラ事業者やあらゆる民間事業者と協定を結ぶことで利用者情報の吸い上げを可能とします。

 自動選別で分析する機械的情報はIPアドレスや指令情報など「通信の秘密」の対象となると政府も質疑で認めています。特定のサイバー攻撃に関係する「機器などの探査が容易になると認めるに足りる状況のある情報」も含まれ、政府による恣意(しい)的な選別が行われる懸念はぬぐえません。収集情報は外国政府など第三者提供も可能です。個人情報は必要以上に収集せず、目的外利用や第三者提供は事前に本人同意を得るのが大原則です。これらを無視するもので極めて重大です。

 協定で得た情報は海外からのサイバー攻撃被害防止目的以外にも利用できる規定が盛り込まれ、目的外利用の範囲に制限はなく、警察や自衛隊などが業務に使用することも否定しませんでした。公安警察の個人情報収集・保有、提供は違法と断じた大垣事件判決をないがしろにするものです。

 反対理由の第二は、自衛隊と警察が、憲法と国際法が禁じる先制攻撃に踏み込む危険があるからです。

 サイバー攻撃に関する世界の共通認識はいまだ形成途中で、自衛隊と警察が海外の機器に侵入し、監視し、使えなくする「アクセス・無害化措置」を行えば、相手国から主権侵害と受け取られる危険があります。政府は国際法上の緊急状態によって違法性を阻却できると言いますが、そう主張するのは一部の国だけで、国際社会の共通認識ではなく、相手国の同意もなく「疑い」だけでそのような措置にふみきれば、国際法違反の先制攻撃と評価される危険は否定できません。

 政府は、自衛隊による「アクセス・無害化措置」を、グレーゾーン事態や重要影響事態で、米軍が軍事行動を行う相手国のサーバーに発動できると認めました。日本が武力攻撃を受けていないのに、米国と交戦状態にある相手国に先制的に「アクセス・無害化措置」にふみきれば、日本から参戦してきたとみなされかねず、憲法9条をふみにじり、日本に戦争の危険を呼び込むものです。

 警察が犯罪処罰を超えて安全保障に関わる域外の実力行使にふみこむのは、他国の領域主権を侵害し、警察のあり方を根底から覆し、こうした行為を裁判所の令状もなく第三者機関の承認などのまやかしで容認するものです。第三者機関は法における措置の適正な実施を確保するための審査や検査を行う機関にすぎず、権力乱用防止や人権保障の機関ではなく、令状主義を形骸化させかねず、警察の権限拡大そのものです。


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