2025年3月23日(日)
主張
オンラインカジノ
見過ごせぬ国の賭博容認姿勢
ポケットの中にいつもカジノがある―。危険な本質をよくとらえた例えです。社会問題化している海外の違法なオンラインカジノ。スマートフォン一つで、誰でもいつでも野放図に賭けられ、若い人を中心に急拡大する危うい実態が浮き彫りになっています。
警察庁は13日、違法な海外のオンラインカジノ経験者が国内で337万人に上り、年間の賭け金総額は推計1兆2400億円との調査結果を初めて公表しました。「オンラインカジノでの賭博がまん延していることが分かった。極めて深刻」な事態です。
調査では経験者のうち、20歳代が最多の30%を占め、30歳代(29%)、40歳代(22%)と続いており、若い人には「ゲームの延長」との言葉も聞かれます。
■違法性知らず4割
オンラインカジノは、インターネット上でスロットやカードゲームのほかスポーツの勝敗に賭けるスポーツ賭博まで簡単に行えます。運営サイトは合法化している海外の国にありますが、そのサイトに日本から接続して賭ける行為は違法となります。
ところが、違法と明記していないサイトや無料版から違法な有料版へ誘導するものなどが数多くあります。ネットだけでなく、テレビCMで無料版の宣伝を流す状況もありました。そのため調査でも4割の人が違法性を認識していなかったことが報告されています。
この間、芸能人やスポーツ選手が事情聴取を受けたり、書類送検されたりして、初めて違法性を認識する人も少なくありません。
怖いのはその依存性です。米大リーグのドジャース・大谷翔平選手の通訳だった水原一平氏は、約2年でオンライン賭博を1万9千回繰り返し、借金は62億円にまで膨らみました。自分では歯止めが利かなくなり、近しい人にうそまでついてのめり込む。ギャンブル依存症となれば、人生を台無しにしかねません。先の警察庁の調査では、オンラインカジノ経験者のうち46%が消費者金融や知人に借金した経験があり、利用者の6割はギャンブル依存症の自覚があるといいます。
■実効ある対策急務
見過ごせないのは、政府や与党がほとんど対策を講じてこなかったことです。それどころか、カジノを中核とする統合型リゾート(IR)の誘致に躍起となり、オンラインのスポーツ賭博についても「活用の可能性について検討することも有益」としてきました。21日、政府は違法利用対策を閣議決定したものの、その本気度が問われます。
日本は、パチンコや競馬・競輪などの公営ギャンブル、スポーツ振興くじを含め、売上総額が約20兆円に及ぶギャンブル大国です。これ以上、国民をギャンブルにさらしていいわけがありません。
オンラインカジノの違法性を周知するだけでなく、誘導広告や国内の決済代行業者などの取り締まりの強化が必要です。ギャンブル依存回復を支援する団体は、スイスのように、海外のカジノサイトをブロックすることなども求めています。国を挙げた実効性ある対策が急務です。