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2025年3月21日(金)

「働き方改革」無視の突貫工事

万博海外館 しわ寄せ現場に

 大阪・関西万博の開幕(4月13日)が目前に迫り、建設が遅れている海外パビリオンの工事の従事者に過酷な労働が強いられています。現場からは「『働き方改革』度外視、24時間体制の突貫工事になっている」との告発や「開幕時の体裁より労働者の命、健康を最優先にすべきだ」と是正を求める声が上がっています。(藤原直)


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(写真)日曜朝7時台、万博の工事現場に向かう労働者ら=9日、大阪市此花区夢洲駅前

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(写真)万博現場の駐車場には土曜日でも多数の車両が=8日、大阪市・夢洲

 海外館2館に関わる工事会社の社長は「工期の遅れで工程もめちゃくちゃになっているのに元請けは『期日までに何とかやってくれ』としか言わず結局、残業や休日出勤をせざるをえない。私も2月は休み返上で、社員には現場近くにホテルを用意して朝から夜中の0時すぎまで頑張ってもらったこともある」と苦しそうに語ります。

 業者も各地から作業員を集めようと懸命。20代の男性作業員は、海外館の内装作業を知りあいの業者から頼まれました。2月から日中、会社の仕事をした上で夜9時ごろ万博の現場に入り、深夜3時ごろに帰宅する生活を週1~5日間は続けているといいます。

 遅れているのは各国が自前で建設する海外パビリオンです。1年ほど前、万博協会は2024年10月には建築工事を、25年1月には内装工事を終え、3月以降は準備などを行う工程表を示していました。しかし、第1段階の建築工事を終え完了証明証を交付された海外パビリオンは、14日時点で42館中12館どまり。大幅な遅れが生じているにもかかわらず、万博協会の担当者は「開幕時には内装も含めて工事が完了している状態にすることが唯一のゴールだ」と話します。

 全国建設労働組合総連合関西地方協議会(全建総連関西地協)は緊急声明(1日付)を発表し、「完成時期を無理に区切った突貫工事のしわ寄せが現場従事者に及ぶことは明白だ」と指摘。法令順守の徹底と労働者の命と健康・人権を最優先にした施工体制への支援と、開幕までに一部工事が間に合わないことも想定した完成時期への柔軟な対応を求めました。

強引な開催へ 労働者が犠牲

命・健康最優先の対応こそ

 全建総連関西地協には「高所作業で墜転落制止器具を着用していたが、フックをかける親綱も設置されていないので意味がなかった」「駐車場から現場まで1キロ近く歩かなければいけない」といった声も寄せられています。万博協会に報告された休業4日以上の事故・労働災害は一昨年4月から昨年12月までで8件でしたが、1月には3件と急増しています。

 日本共産党にも多くの相談が。大阪八尾市の田中裕子市議は2月に現場で働く労働者の母親から「息子が年明けから帰宅は深夜の2時~3時で朝6時には出発する生活が続いている。休むよう勧めてもみんながそうだからと仕事に行ってしまう」との相談を受けました。「万博を強引に開くために現場労働者を犠牲にするのは大問題です」と語ります。

 現場従事者からは「むちゃな工程を要求され、一生懸命やっても失敗があれば業者のせいにされる。責任逃れする人が多すぎる」との指摘も。女性作業員からは「トイレが不衛生で会場外まで行っている」との声も上がっていたといいます。

 実態調査を続けてきた関西地協事務局の村瀬宏典氏(京建労書記長)は語ります。「海外パビリオン工事現場は、通常の8時間労働では間に合わないと長時間労働や夜間労働を強いたり、夜の部分には一人親方などを集めて従事者を補ったりしているのが実態です。労働災害や不払い労働など現場が犠牲にされる危険性が高まっています。事故が発生したときに補償されない従事者が出る可能性も否定できません。従事者からは夜間の救急体制にも懸念の声が寄せられています。万博協会や政府は完成より労働者の命と健康を最優先にした対応をとるべきです」


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