しんぶん赤旗

お問い合わせ

日本共産党

赤旗電子版の購読はこちら 赤旗電子版の購読はこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加

2025年3月17日(月)

クローズアップ

広島 日鉄呉跡地の軍事拠点計画

詳細知らせぬ防衛省に怒り

市民守られず捨てごま

 広島県呉市の日本製鉄(日鉄)瀬戸内製鉄所呉地区跡地を防衛省が一括購入し「多機能な複合防衛拠点」を整備する計画について、同省は敷地内に配置する施設のゾーニング(区分)を3月中に市、県、日鉄との4者協議で示す方向です。2月に日本共産党議員らが行った聞き取りで、住民に詳細を知らせず日鉄との交渉を前のめりに進める防衛省に怒りの声があがりました。(古荘智子)


写真

(写真)日鉄呉跡地(後方)を調査する(左から)仁比、白川、大平、高見、山添の各氏=2月20日、広島県呉市

図

 防衛省が「防衛力の抜本的強化」のため日鉄呉地区(2023年9月閉鎖)跡地130ヘクタールに複合防衛拠点をつくる意向を県、市に申し入れたのは昨年3月。市議会での説明では呉地区が米軍佐世保基地や岩国基地に近く南西方面へのアクセスが容易な「重要な場所にある」と位置づけました。

基地増強の一環

 日鉄呉地区に近い海上自衛隊呉基地には3月、島しょ部への輸送力強化を目的とする陸海空共同の「自衛隊海上輸送群」が新設されます。複合防衛拠点は、アメリカの対中国軍事戦略に基づく沖縄・南西諸島の軍事要塞(ようさい)化と一体となった西日本の基地増強の一環だといえます。

 昨年9月に発表したゾーニング案では、自衛隊装備品を維持整備・製造する区域、ヘリポートや物資集積場、訓練場、港湾などの配置の概要が出されました。跡地取得が未定なのに、25年度予算案で調査費4・6億円を計上しています。

 跡地利活用については県と市がエネルギー産業やデジタル産業を誘致した場合の経済効果をそれぞれ6・3兆円、5・7兆円と試算する調査をしています。

 市民などでつくる「日鉄呉跡地問題を考える会」は昨年12月、防衛拠点でなく平和産業誘致を求める署名約2万筆を市に提出。街頭宣伝や中国四国防衛局への要請などをしてきました。

「撤回しかない」

 2月20日の現地調査は日本共産党の山添拓政策委員長、仁比聡平参院議員、大平よしのぶ衆院中国比例予定候補、白川よう子参院比例予定候補、高見あつみ参院広島選挙区予定候補らが参加。装備品の内容などの質問に「検討中」と答えない防衛省側に対し、調査団は「市民の疑問に答えないまま日鉄との売買交渉を進めるのは許されない」と批判しました。

 聞き取りに出席した住民は、戦前の旧軍用財産を公共・民間施設用地に活用した旧軍港市転換法(軍転法)の意義を述べ、「日鉄跡地が防衛施設になれば逆転換だ」と抗議しました。

 「防衛拠点ができればミサイルを撃ち込まれるかもしれない」「ヘリポートとあるが、どんなヘリが配置されるのか。騒音は?」―4日の呉市議会で日本共産党の奥田和夫議員は、日鉄跡地問題に対する市民の不安の声を紹介。市が「防衛省と相談して検討」といって市民説明会を開かないことを糾弾しました。

 「自衛隊は攻撃される事態を想定し基地強靱(きょうじん)化しているが、市民は守られず、捨てごまではないか。呉市の未来の発展につながらない複合防衛拠点化は撤回しかない」


pageup