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2025年3月7日(金)

主張

トランプ議会演説

国連憲章無視の主権侵害宣言

 トランプ米大統領の施政方針演説は、大きな問いを投げかけました。米国は先制攻撃戦略を持ち、それを実行する軍事基地網を世界中に張り巡らしている国です。その大統領が、勝手気ままに同盟国や中小国の主権を侵害しだしたら、世界はどう対応するのか―。日本はこのまま「日米同盟絶対」を続けていいのかが問われます。

 トランプ氏は改めて気候変動対策のパリ協定からの離脱を“成果”とし、石油・天然ガスの採掘、火力発電所の増設方針を強調しました。世界保健機関(WHO)などからの離脱と合わせ、できるだけ国際約束に縛られたくないという姿勢が鮮明です。

■同盟国とあつれき

 他国の経済主権にお構いなしに“貿易戦争”を仕掛ける姿勢は、同盟国ともあつれきを深めています。欧州連合(EU)、カナダ、韓国などを名指しで不当な高関税をかけていると非難し、関税措置をとると強調しました。該当国は対抗措置をとる構えです。

 トランプ氏が領土の拡張を改めて主張したことで、あつれきは経済面から外交・軍事面にまで拡大しています。グリーンランドを自国の安全保障にとって重要だとして、「手に入れるつもりだ」と述べました。

 中小国に対する圧力も続けています。1999年12月にパナマに完全返還されたパナマ運河を「取り戻す」との持論も引き続き展開しました。かつて「米国の裏庭」といわれ介入を繰り返した地域だけに、メキシコ湾を「アメリカ湾」に改称したり、南部国境から入る移民に犯罪者とのレッテルを貼ることと合わせ、トランプ氏の言動は“大国主義”の色彩を帯びます。

 ウクライナ問題では、力ずくで領土拡張をはかるロシアへの批判は聞かれませんでした。

 バイデン前政権時代は、“民主対専制”の掛け声で、世界を分断する姿勢が問題となりました。トランプ氏は、「民主」の看板さえなく、露骨に世界最大の覇権主義国としてふるまおうとしています。国連のグテレス事務総長は、「今ほど、法の支配の貫徹や多国間主義を守るために結束が必要な時はない」と警告しました。

 同時に、アメリカに振り回されない世界をつくる動きが、強まることも必然です。その際の旗印は、国連憲章と国際法にもとづく公正な平和です。ガザ問題では、トランプ氏のパレスチナ人強制移住案に対抗し、アラブ連盟は首脳会議で、「2国家共存」を再確認する再建案を発表しています。

■問われる外交姿勢

 日本の外交態度も問われます。日本政府が2027年度に軍事費を国内総生産(GDP)比2%に増額すると米政府に約束していることに関し、次期国防次官に指名されているコルビー氏は、さっそくGDP比3%を要求し、日本には「圧力をかける手法が有効だ」(議会証言)などと述べ、石破茂政権の足元を見ています。

 ひたすらトランプ氏におもねる「日米同盟絶対」の姿勢では、国民の利益も平和の国際秩序も守れません。


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