2025年3月4日(火)
きょうの潮流
1本の木に紅白の花を咲き分ける「思いのまま」。あでやかな薄桃色の花姿をみせる「呉服枝垂(くれはしだ)れ」。一つの枝に対になって咲く花の様子が、中国の賢人が議論を交わす姿に似ていることから命名された「座論梅(ざろんばい)」▼見ごろを迎えた東京・大田区立の池上梅園です。先日、陽気に誘われて訪れると、園内は大にぎわい。一面に咲き誇るさまざまな品種の梅の花を愛(め)でていました▼ここは戦前、日本画家・伊東深水の自宅兼アトリエで「月白山荘」と呼ばれていましたが戦災で焼失。戦後所有した築地の料亭経営者が拡張し、その後庭園として都に譲渡されました。大田区に移管されてからは紅梅を中心に植林が進められ、いまでは30種余りの梅を楽しむことができます▼まだ寒さが厳しい中で最も早くほころぶことから百花の魁(さきがけ)と称され、春告草ともいわれてきた梅。古来、寒さに耐えていた人びとは、その開花によって待ちわびた春の訪れをひしひしと。凜(りん)と咲く姿は「高潔」「忍耐」といった花言葉にも表れています▼半袖からまたダウンに。東京でも雪が降って、季節は三寒四温でゆっくりと進んでいくかのように。この時期は寒暖の差や花粉症が始まり、体調を崩す人も多い。ご自愛ください▼生命力や希望を象徴する梅は昔から縁起物として重宝されてきました。戦災から再生した池上梅園のように、そのたくましい姿を表す「不屈の精神」という花言葉も持っています。各地の梅園も見ごろ。あなたはいま、梅の花に何を感じていますか。