2025年2月5日(水)
高額療養費負担引き上げ
がん患者の悲痛な声聞け
田村貴昭氏が撤回要求
衆院予算委
「治療を諦める人を増やすような引き上げはやめて」―。日本共産党の田村貴昭議員は4日の衆院予算委員会で、2025年度予算案に盛り込まれた、高額療養費制度(医療費が高額となった場合の自己負担限度額)の上限額引き上げで大幅な負担増を強いられる、がん患者らの悲痛な声を示して撤回を求めました。
年収 | 現在 | 2027年8月~ |
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202万円(正社員以外) | 57万2400円 | 63万6300円 |
460万円(全労働者) | 64万6201円 | 71万0191円 |
530万円(正社員) | 64万6201円 | 91万0171円 |
※年収は財務省・民間給与実態統計調査(2023年調査)の雇用形態ごとの労働者の平均年収。厚生労働省高額療養費制度見直し案から試算 |
田村氏は、全国がん患者団体連合会(全がん連)の緊急オンライン調査にわずか3日で、がん患者や家族など3623人から「やめてほしい」と切実な声が寄せられたと紹介。がん当事者が1月12日に始めた署名は5万人分、全がん連など3団体が呼び掛けた見直しを求めるネット署名は1月29日の開始から1週間で7万5000人を超えます。
石破首相は「長期に治療を要する人などに納得いただけないのなら、それは考えていかなければならない」と答弁をしています。田村氏は「考えなければいけないのは白紙に戻すことではないか」と追及。石破首相は、「凍結とか白紙に戻すことだけが解決策だと認識しているわけではない」と突き放しました。
引き上げの影響について福岡資麿厚生労働相は、高額療養費の受給者は年間795万人(国民の15人に1人)であり、年4回以上受給している人は155万人(80人に1人)だと答弁しました。田村氏は「広い範囲に影響が及ぶ」と強調し負担増の実態を示しました。
年収3分の1
進行性乳がんの「ベージニオ+アリミデックス併用療法」は、今回の引き上げにより、正社員以外の平均年収202万円の労働者だと高額療養費の自己負担は、57万2400円から63万6300円へと6万3900円もの負担増となり、年収の3分の1が医療費負担に消えるとの試算を示しました。
「治療中は副作用などで休まざるをえず減収。一方、医療費以外も通院費、入院すれば差額ベッド代、ほかの薬など費用はさらにかさむ。外食などとてもできない」との患者の声も突き付けました。
年収が全労働者平均の460万円、正社員平均の530万円の層も「すでに限界まで負担をしている」と指摘。がん罹患(りかん)による平均年収減少率が36%、事業へ影響のあった個人事業主は72%に上るとして「引き上げでなく引き下げこそが必要だ」と強調しました。
田村氏は、今回の引き上げで「非課税世帯を含めすべて増額となる」と告発。「首相は対象の方々の『不安を払拭』『納得していただく』と言うが、これ以上の負担増は、どんなに説明しても負担増だ。不安を拡大するだけ」だと断じました。
「抑制ありき」
さらに、政府が「綿密に検討した」とする引き上げの検討過程の実態にも切り込み、長期にわたって高額な治療をする患者の1年間の負担額の影響について社会保障審議会に諮ったのかと追及。福岡厚労相は「データに基づき議論を行った」と述べましたが、諮ったかどうかについては答えませんでした。
田村氏は「諮っていないということだ。審議会では個別の治療の試算はしたが1カ月の負担を示しただけでまともな資料がなく、がん患者団体を参加させず、引き上げについて患者団体から話すら聞いていない。まさに引き上げありき、社会保障の抑制ありきだ」と強調しました。
「引き上げについて審議会では昨年11月に唐突に議論が始まり、長期治療を継続する患者負担の試算さえ行われず成案になった。これで低所得の方の負担に『綿密に配慮した』と言えるのか」と批判。今回の引き上げは、がん治療による経済負担、収入減少などへの不安で心身ともに弱っていく患者の生活の質や生存期間を悪化させる「経済毒性」を生んでいると警告し、「最低でも引き上げはやめるべきだ」と迫りました。