しんぶん赤旗

お問い合わせ

日本共産党

赤旗電子版の購読はこちら 赤旗電子版の購読はこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加

2024年12月5日(木)

きょうの潮流

 死臭のひどさに深呼吸する少年。マイクを手にした若い男性の声が聞こえる―。「先に逝った方たちの魂が、目を見開いて私たちを見守っています」▼今年のノーベル文学賞を受けたハン・ガンさんの『少年が来る』は光州事件を題材にしています。独裁体制を敷いた朴正煕(パク・チョンヒ)大統領の暗殺後、わき上がった民主運動を抑えるために戒厳令を拡大。あまたの市民らが死傷した光州事件は、軍事政権下の韓国がその後民主化していく転機となりました▼それから44年。なにを血迷ったのか、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が「非常戒厳」を突然宣布。野党を反国家勢力と見なし、一切の政治活動の禁止や言論統制、集会やストライキの禁止などを告げました▼直後から国会の周辺には抗議する多くの市民や野党議員が集まり、軍隊や警官ともみ合い騒然とする場面も。そこには、今も生々しく残る戒厳下の記憶や権力の乱用を厳しくいさめる民衆のたくましい行動がありました▼尹大統領は一夜にして撤回し投入した軍隊も撤収。野党は内乱行為だとして大統領の弾劾手続きを進めています。今回の背景には国政が行き詰まり、支持率低迷で追いつめられた尹政権が権力を守るために非常手段に訴えたと指摘されています▼「明るい方へ、光が差す方へ、花が咲いている方へ引っ張っていくように願って」。光州生まれのハン・ガンさんは悪夢にうなされるほど精魂を傾けてこの作品を書き上げました。おびただしい犠牲や痛みのうえに、今の民主主義があるというように。


pageup