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2024年11月10日(日)

2024とくほう・特報

兵庫前知事 パワハラ・私物化の実態

民間イベント出演要求 サクラ・事業脚色

 自身のパワハラを告発した職員を探索し自死にまで追い込んだ兵庫県の斎藤元彦前知事―。斎藤氏は知事選(17日投開票)に再出馬し、支援者らがSNSなどで「パワハラはない」と偽情報を拡散しています。本紙は、斎藤氏の複数のパワハラ事案について、その存在を裏付ける公文書を入手。県政を私物化する要求や、県イベント参加者を“仕込む”などの指示が、斎藤氏の言葉として記録されていました。(本田祐典)

斎藤氏の「指示」 公文書を入手

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 斎藤氏のパワハラをめぐっては、告発文書を作成した県幹部が抗議文を残し7月に死去。県議会の県職員アンケートで回答者の4割がパワハラを見た・聞いたと回答しています。

 しかし、維新などは当初、斎藤氏を擁護。世論に押されて県議会全会一致で知事不信任決議(9月19日)をあげた後も、維新・自民に擁護論がくすぶっています。

 本紙はパワハラを公的記録で検証するため、斎藤氏の指示に関する文書を県に開示請求。約130件を入手しました。黒塗りなどで公開は一部ですが、パワハラにあたる言動が散見されます。

理不尽要求多く

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(写真)兵庫県が開示した前知事による「指示」の記録

 県まちづくり部が保管していた「知事からの指示」(2023年4月9日)によると、斎藤氏は民間音楽イベントの開催発表に関与できなかったことで県幹部を叱責。自身のイベント出演を要求しました。

 ―「今回のフェス開催についても、県として何らかの発表やコミットの仕方ができたはず」「連携不足」
 ―「今回、公務として参加できるかどうかの調整を至急」
 これらは、職員アンケートに寄せられた「音楽フェスが開催されたが、知事の耳に入っていなかったため、知事が激怒」「知事が『自分も出席する。出番を作れ』と指示」などの証言と合致します。

 斎藤氏は、大阪・関西万博の「空飛ぶクルマ」(電動垂直離着陸機)に乗りたいと再三要求。県企画部の文書に発言が載っています。

 ―「僕を乗せて飛べるのか」(23年6月9日)

 ―「デモフライトの時に僕が乗るっていうのは有りなの?」(同8月29日)

訪問先に仕込み

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(写真)自身の訪問先にサクラを仕込むよう求めた斎藤氏の指示=兵庫県の公開文書から

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(写真)テンプラ(見せかけ)で事業を脚色するよう求めた斎藤氏の指示=兵庫県の公開文書から

 斎藤氏が仕込み客=サクラを指示したことも、県芸術文化課の文書に記載があります。23年7月4日、県のイベント「ひょうごプレミアム芸術デー」(同11~17日)についてメディア対応を指示し、自身の訪問先にサクラを求めました。

 ―「7/11にハートフル・ファストトラック(子連れや障害者の優先案内)は見る」「メディアの撮影スポットを作ること」

 ―「(サクラを)仕込めるかどうか。あまり仕込むのも良くないが」

 このイベントについて職員アンケートでは、開催5日目(同15日)に斎藤氏が懇談した一時保育利用者10人のうち9人がサクラだったという証言があります。

 斎藤氏が事業を誇張させていたことも、県スポーツ振興課の文書に記載されています。23年8月22日、ゴルフの振興を検討し、次のように指示しました。

 ―「テンプラでいいから、SDGs(持続可能な開発目標)の視点で何か入れて」

 テンプラとは「見せかけ」「架空」などを意味する俗語です。

災害支援は宣伝

 能登半島地震(今年1月1日発生)のボランティアに対する支援を斎藤氏が遅らせたこともわかりました。

 斎藤氏は1月18日の会見で「ボランティアの始まりが阪神・淡路大震災。民間グループも早く被災地で活動したい」と述べ、ボランティアへの助成金拡充をアピールしました。

 しかし、県総務部の文書には斎藤氏の“本音”が記録されています。2月7日、次のように指示していました。

 ―「ちゃぶ台返しだが(中略)4月になっても良く、急いでいない。準備をしていると打ち出ししたいだけ」

 ―「団体にとっても、(とくに被害が甚大な)珠洲や能登、輪島に自分たちで行って活動したということがPRになるのではないか。金沢までならあまり意味がない」

 その結果、支援対象は4月26日以降のボランティアへと後退。より早く被災地に入った団体が助成金不支給となり、「毎日」は「思わぬ壁」(地方版4月11日付)と報じました。

自公維と“蜜月”

 斎藤県政を支えた自民、公明、維新との蜜月ぶりも県企画部の文書に記載されています。23年2月21日、県の万博関連事業を推進する協議会について3党の国会議員から協力を得るよう指示しました。

 ―「自民、公明、維新の国会議員に(中略)顧問就任依頼に行ってください」

 この依頼に応じて自民の末松信介参院議員、公明の赤羽一嘉衆院議員、維新の片山大介参院議員らが協議会の顧問に就任。県万博推進課は「日ごろ県政にご理解ある党を訪問し依頼した。バランスに配慮し(指示がない)立憲民主党も顧問になっていただいた」とします。

おおさわ候補で県政転換を

憲法が輝く兵庫県政をつくる会代表幹事・神戸女学院大学名誉教授 石川康宏さんに聞く

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 兵庫県知事選(17日投票)では、憲法が輝く兵庫県政をつくる会から医師の、おおさわ芳清(よしきよ)さん=日本共産党推薦=が立候補しています。同会代表幹事の石川康宏さん(神戸女学院大学名誉教授)に、県政を変える展望を聞きました。

 知事選でまず問われるのは県政正常化です。斎藤元彦前知事によるパワハラに加え、斎藤氏を知事にかついできた県議会自民のパワハラも職員アンケートで告発されています。

 兵庫県の自民は知事選で、三つに分かれて元尼崎市長の稲村和美氏、斎藤氏、維新前参院議員の清水貴之氏を支援しています。稲村氏と会談した自民県議団有志は、県立大学無償化の見直しで一致したと公言しています。県民ではなく、自民の要求をまず聞く人では県政は変わりません。

 パワハラで傷ついた県政には、現場の声や専門性を生かした県政運営を掲げる、おおさわさんが必要です。病院長として現場の声を徹底して聞き、それによって病院運営を改善してきた人です。

 もう一つの争点は、県民生活を守ることです。自民が支援する3候補は大型開発優先という点で変わりません。稲村氏は病院統廃合を「必要」とし、18歳までの医療費無料化を「考えていない」と明言しています。尼崎市長時代も幼稚園・保育所や公民館の統廃合など、福祉切り捨てを徹底してきました。まったく期待は持てません。

 おおさわさんは大型開発や病院統廃合の見直しを訴え、子ども医療費無料化の拡充や国保料・介護保険料引き下げなど県民本位の政策を掲げています。その実現が望まれます。


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