2024年11月9日(土)
中絶権擁護 7州勝利
米住民投票10州で実施
人権団体から歓迎の声
【ワシントン=柴田菜央】米大統領選(5日投開票)と同時に全米各州では住民投票が実施されました。トランプ前大統領の任命によって保守化した連邦最高裁が2022年に人工妊娠中絶を憲法上の権利と認めた判決を覆して以来、各州で女性の権利を回復させる運動が続いてきましたが、今回10州で中絶の権利を法的に保障するなどの提案が出され、7州で勝利しました。
米政治情報サイト「バロットペディア」によると、中絶の権利を擁護する提案が賛成多数で可決されたのはアリゾナ、コロラド、メリーランド、ミズーリ、モンタナ、ニューヨーク、ネバダの7州。ミズーリでは中絶が全面的に禁止されていましたが、「性と生殖に関する自由」の権利を州憲法に書き込む修正を行う提案が可決され、中絶が認められることになりました。
7州で勝利の成果をあげたことに、人権団体からは歓迎の声が上がっています。「生殖権利センター」のナンシー・ノーサップ会長は「有権者は、(中絶を憲法上の権利として認めた)ロー対ウェイド判決が覆された後、失われた基本的人権と自由を取り戻すことを求めてきた」とし、特にミズーリでの勝利を歴史的だと評価しました。
一方、フロリダ、ネブラスカ、サウスダコタの3州では否決。フロリダでは賛成が57%に上りましたが、可決に必要な60%に届きませんでした。
大統領選でも中絶は大きな争点の一つになりました。民主党候補のハリス副大統領が中絶の権利擁護を訴えてたたかった一方、共和党候補のトランプ前大統領は各州に任すとして争点化を避けました。各州の女性たちは住民投票でも権利回復を目指し取り組みました。
オハイオ州では、23年の住民投票で州憲法に中絶の権利を書き込み、6週以降の中絶禁止法を失効させています。