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2024年11月7日(木)

「所得税の103万円の壁」とは?(下)

パートの主婦の場合は?

法改正で夫の税金は増えず

 Q 学生だけでなく、パートで働く主婦にも「103万円の壁」があるのですか?

 A 主婦がパートで働いている場合も、昔は「103万円の壁」がありました。103万円を超えると「配偶者控除」が適用されなくなり、夫の税金が増えてしまうという問題があったのです。

 しかし、7年前に法律が改正され、2018年からは、年収103万円を超えても150万円までは配偶者控除と同額の「配偶者特別控除」が適用されることになったため、妻の年収が103万円を超えても夫の税金が増えることはなくなりました。さらに、150万円を超えても控除が一気になくなるのではなく、徐々になくなる方式になったため、税金が急激に増えることはありません。

 税の問題としては、パート主婦の「壁」はなくなったのです。人によって、夫の会社の給与に「家族手当」があって、その年収基準が103万円となっている場合には、それが「壁」となる場合もありますが、それは企業が決めることで、直接には税制の問題ではありません。

「壁」を気にしている人は多いようだが?

「保険料の壁」で収入大幅減

 Q でも、パート主婦で「壁」を気にしている人は多いようですが?

 A パート主婦の多くが気にしているのは「103万円」よりも「106万円の壁」や「130万円の壁」の方です。こちらは、「税の壁」ではなく、年金や健康保険の「保険料の壁」です。

 会社員や公務員などの厚生年金加入者の配偶者は、年収130万円以内ならば、健康保険の扶養家族、年金の「3号被保険者」になれるので、保険料を払わなくて済みます。でも、年収が106万円に達すると、職場の厚生年金と健康保険に加入して、自分で保険料を払わなければならない場合が出てきます。保険料率は合計で15%くらいなので、106万円でも約16万円の保険料が天引きされ、手取りが逆に90万円くらいに減ってしまいます。

 一方、職場が社会保険に入っていない場合などは、年収130万円までは保険料を払うことになりませんが、130万円を超えると国民健康保険と国民年金の保険料を払うことになり、こちらは30万円前後の保険料と、さらに高い負担になります。人によって「106万円」または「130万円」で手取りが大きく減ってしまうので、これが「保険料の壁」になっているのです。

「壁」はどうやったらなくせる?

「最低保障年金」制度の創設が必要

 Q 「106万円」「130万円」の壁はどうやったらなくせるのでしょうか?

 A この二つの「保険料の壁」の最大の原因は、「3号年金制度」(会社員配偶者の保険料免除制度)にありますが、この「3号年金」ができたのは、日本の年金制度に「最低保障年金」の仕組みがないためです。多くの先進国の年金制度には、保険料を払わなくても老後に一定額までの年金が支給される「最低保障年金」がありますが、日本にはまったくありません。この欠陥を補う形で「3号年金」がつくられているのです。

 「3号年金」は、会社員の配偶者だけが対象で、自営業者の配偶者や独身者には適用されず、不公平な面もあります。職種や性別に関係なく、誰にでも適用される「最低保障年金」の制度をつくれば、「3号年金」を廃止することができます。そうすれば「保険料の壁」の解消に向かうことになります。

当面の対策は?

最賃の引き上げと社保料減で対応を

 Q でも「最低保障年金」はすぐには難しいと思いますが?

 A 確かに、最低保障年金で問題を根本的に解決するには、まだ時間が必要です。当面の対策としては、多くの人が「保険料の壁」を気にせずに、これを乗り越えて働けるようにすることです。そのためには、二つのことが重要です。

 一つは、最低賃金をすみやかに時給1500円にすることです。今のように、毎年50円くらいの引き上げでは、「壁」にぶつかることを繰り返すだけになり、いつまでも乗り越えられません。たとえば、時給1000円で年間1000時間働く人は、年収100万円で「壁」の範囲です。時給が1060円に上がっても、年収が106万円になって保険料負担が生じると、逆に手取りが減ってしまいます。時給が1500円になれば、年収が150万円になり、保険料や税金を差し引いても、手取りは今より大幅に増えます。こうすれば、「壁」を乗り越えて働けます。

 もう一つは、低所得者の社会保険料を軽減することで「壁」の高さを下げることです。とくに、国民健康保険の保険料の負担は大変重くなっています。年収130万円のパート主婦の場合、会社の健康保険ならば保険料率が5%程度で6・5万円ですが、国保料の場合、たとえば大阪府では最高16万円にもなってしまいます。日本共産党は、国保財政に1兆円の予算を追加することで、国保料を下げることを提案しています。これを実施すれば、大阪のパート主婦の国保料は5万円まで下がります。

 (おわり)


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