2024年11月5日(火)
英 深刻な水質汚染に怒り
130団体超共催 過去最大デモ
ロンドン
川、湖、海の汚染が深刻な英国で、きれいな水をとりもどそうと呼び掛ける130以上の団体による、この問題での過去最大規模のデモが3日、ロンドンで行われました。デモは汚染企業の怠慢に対して、厳しい規制を要求しました。
テムズ川沿いの出発地点から1・8キロ先の英議会前広場まで、デモは途切れなく続きました。参加者は、「英国の水路に毒を流すな」「われわれはふん尿のなかでおぼれている」などの横断幕を掲げ、手作りのプラカードやオブジェを持って行進しました。
行動は、環境保護団体リバー・アクションが呼び掛け、自然保護団体のほか、水泳、釣り、サーフィン、ボートなど幅広いスポーツ団体、水道企業職員を組織する労働組合GMBユニオンなど130以上の団体が共催。これら団体の会員数合計は1010万人に達しました。
集会では、医師でパリ五輪のローイング(女子ダブルスカル)金メダリスト、イモージェン・グラントさん(28)も演壇に立ち、「競技を始めて10年間、川の水質がひどくなるのを感じてきた。ボートが転覆したとき、技術のことより、水が口に入って病気になることの方を心配してしまう」と告白。医師としても、心と体の健康にとって水がいかに大切かを訴え、行動の強化を力強く呼び掛けました。
英国では、未処理の下水、農場からの排水、産業排水、プラスチック汚染などで水質が極度に悪化。水中や水辺の動物が死滅する事例が過去最多となっています。
1989年に保守党のサッチャー政権がイングランドとウェールズ地方の水道事業を民営化し、水に対する管理権を放棄。以来、民間水道会社が株主に巨額の配当を支払いながら、未処理下水の放出を常態化させていることが国民の怒りを呼んできました。
リバー・アクションの創立者のチャールズ・ワトソン氏は地元メディアに対し、「水を汚染させることが利益を生む状態をやめさせることが行動の主眼だ」と強調。現行法を厳格に施行し、規制機関を改革し、違法な汚染を罰すべきだと述べています。
労働党政権は9月、民間水道企業の幹部のボーナス支払い差し止めなどの罰則強化を盛り込んだ法案を提出しましたが、国民の多数が支持する水道の再公営化には背を向けています。