2024年11月4日(月)
まっとうな賃金と働き方に転換を
世界人口の約11% 9.7億人精神疾患
国連専門家が報告書で提言
【ベルリン=吉本博美】国連の専門家はこのほど、世界人口の約11%にあたる9億7000万人が精神疾患を経験していると指摘し、国内総生産(GDP)の増加を主軸とする経済から個人の幸福を重視する経済への転換を求めました。
国連特別報告者(極度の貧困・人権担当)のオリビエ・ドゥ・シュッター氏は10月25日に発表した報告書で、多くの国が採用するGDP基準の経済システムが貧困を放置していると指摘。ホワイトカラーの労働者の中でも、生産性や競争を追求するあまり「燃え尽き症候群」の発症率が高まっているといいます。
特にギグエコノミー(単発・短期の仕事を請け負う働き方)に対する懸念も表明。失業状態よりも精神衛生上悪い場合があると指摘します。不安定雇用で低賃金、予測できない仕事のスケジュールなど「健全なワークライフバランスが確保できない」と弊害を指摘。特に低所得層の精神疾患率が高所得層よりも高いと報告しました。
シュッター氏は各国政府に対し、全ての労働者がまっとうな仕事と生活賃金を確保できるための措置を要求。経済の安定は社会保障の強化を通じて確保できるとして「壊れた経済システムの修復に取り組むしかない。もっと多くと果てのない探求ではなく、個人の心身の健康を軸とすることで貧困やメンタルヘルスの危機に対処できる」と指摘しました。