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2024年10月19日(土)

2024総選挙 目でみる経済

格差の原因は株主資本主義

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(写真)東京証券取引所=東京都中央区

 石破茂首相は「資産運用立国の政策を引き継ぎ、発展させる。内外からの投資を引き出す投資大国を経済政策の大きな柱とする」(1日の記者会見)といいます。しかし、高収益をめざして世界を股にかける投資ファンドを株式市場に呼び込むために、大企業と大株主の利益を優先する株主資本主義を強めたことこそが、貧困と格差を広げて日本経済を混迷させた根本原因です。

株主配当が増

 財務省「法人企業統計」によると、2012年度から22年度にかけて、資本金10億円以上の大企業(金融・保険を除く)の当期純利益は3・9倍に急増。株主配当も2・3倍に増えました。他方で従業員1人当たり給与は1・1倍と横ばいでした。(グラフ1)

 この二極分化は自然現象ではありません。自民党政権が株主資本主義の政策を推し進めた結果です。

グラフ1

 株主配当は法人税を納めた後の純利益から支払われます。大企業は純利益増大のために▽人件費▽下請け単価▽設備投資▽納税額―などの「コスト」削減に明け暮れて日本経済を冷え込ませました。自民党政権の「アベノミクス」は▽異次元金融緩和による円安誘導▽法人税減税▽社会保障改悪▽労働規制緩和―などで多国籍大企業の純利益増大と株価上昇を後押しする経済政策でした。国民と中小企業は▽円安を要因とする物価上昇▽消費税増税▽年金の実質削減▽人減らしと雇用の非正規化―などに苦しめられ、実質所得を減らされました。

 さらに自民党政権は、増えた大企業の純利益や内部留保を株主に還元させるため、株主の権力を強める「コーポレートガバナンス(企業統治)改革」を強行しました。

株主至上主義

グラフ2

 安倍晋三政権は15年、東京証券取引所を巻き込み、上場企業を対象とする「コーポレートガバナンス・コード」(企業統治指針)を策定。原則の第一に「株主がその権利を適切に行使することができる環境の整備」をあげ、株主至上主義を経営者に押し付けました。17年の「未来投資戦略」では「コーポレートガバナンス改革による企業価値の向上」(株価上昇)が「アベノミクスのトップアジェンダ」(最優先課題)だと強調しました。

 経済産業省は17年に策定した「『攻めの経営』を促す役員報酬」の「手引き」を6回も改訂・補強し、役員への株式報酬を導入するよう企業に迫ってきました。株式報酬について「手引き」は「経営陣に株主目線での経営を促したり、中長期の業績向上インセンティブを与えるといった利点があり、その導入拡大は海外を含めた機関投資家の要望に応えるもの」だと主張。経営者に自社株を持たせて株主目線に立たせることで、株主配当や自社株買いによる株価つり上げを促し、投資ファンドを利する意図を露骨に示しています。

 実際に、株式報酬を導入した日本企業は17年の41%から23年の76・8%へ急増しました(グラフ2)。それに伴って株主配当が増えてきました。

 大株主の権利と利益を最上位に置く株主資本主義の政策を石破政権が「引き継ぎ発展」させるならば、貧困と格差がさらに拡大し、日本経済の混迷が深まるのは必至です。(杉本恒如)


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