2024年10月19日(土)
きょうの潮流
真っ先に思い浮かべたのは、夜間中学の教諭役でした。年齢も境遇もちがう生徒との心の交流。山田洋次監督「学校」で演じた、涙もろく情熱的な「黒井先生」は自身の人柄がにじみでていました▼俳優の西田敏行さんが亡くなりました。テレビや映画、舞台で演じてきた、いくつもの役柄。それは本人の中からわきでる魅力を通し、人びとの胸に忘れがたく残っています▼子どもの頃からの映画好きが高じて役者の道へ。故郷の福島から上京、貧乏生活が続きました。しかし志を失わず、やがて数々の人気役に。なによりも人を喜ばせ楽しんでもらう、それによって自分も喜び楽しむことを原点に置いて▼仲間を、人間をいとおしく思う生き方は役を離れても。松竹の大船撮影所売却反対闘争では「生きる情熱!映画への熱情!失うことなく働ける現場を確保してください皆さんの仲間俳優西田敏行」との連帯メッセージを送りました。日本俳優連合の理事長を長く務め、文化予算の増額やインボイス制度の中止を国に訴えました▼故郷を襲った大震災や原発事故の際には、支援の輪を広げる活動も。本紙日曜版の創刊記念には「戦争は絶対してはいけないという思いは、母から受け継いだ私の信条です。日本が二度と戦争をすることがないよう、ますます頑張ってほしい」と▼利益最優先、成果主義の世の中にあって、自由に人間らしく生きる「釣りバカ日誌」のハマちゃんは、西田さんそのもの。心の豊かさを追い続けた76年の役者人生でした。