2024年10月17日(木)
主張
強制不妊補償法
優生思想根絶に向けた一歩に
特定の病気や障害を理由に「不良な子孫の出生を防止する」という優生思想により、法律で不妊手術や妊娠中絶を強いた―。国による戦後最大の人権侵害に対し先の臨時国会で旧優生保護法(強制不妊)補償法が全会一致で成立しました。
「優生上の見地からの誤った目的に係る施策を推進し」、子どもを持つことを自ら決める機会を奪ったことに対し「悔悟と反省の念を込めて深刻にその責任を認めるとともに、心から深く謝罪する」と前文に明記しました。優生思想を根絶する一歩にしていかなければなりません。
■被害者に深く謝罪
旧優生保護法(1948~96年)は、だましてもよいとして不妊手術を強制しました。遺伝性がない病気や障害にも対象を拡大し、障害者を不良な存在として根絶やしにしてもいいという優生思想を広げ、被害者は2万5千人、中絶手術は5万9千人にのぼります。
仙台市の女性が日弁連の人権擁護委員会に救済申し立てをしたのを契機に超党派の議員連盟ができ、2019年に一時金支給法ができました。しかし国の賠償責任を認めず慰謝にとどまったため、その後各地で提訴が続きました。
7月の最高裁大法廷は、旧優生保護法は憲法13条(個人の尊厳)、14条(差別の禁止)違反だとし、国と国会の責任を断じました。議員連盟はこれをうけ、新たな補償法の立法化プロジェクトチーム(PT)を立ち上げ、臨時国会中の成立にこぎつけました。強制不妊の被害者本人に1500万円、配偶者に500万円の補償金、中絶を強いられた人に200万円の一時金を支払います。
日本共産党は旧法の成立(1948年)、改定(52年)に賛成したことを、2018年に「国会の不作為は共産党にも責任の一端がある」と謝罪し、第29回大会決議で同法成立と改定への賛成は「重大な誤り」と踏み込みました。
8月には、田村智子委員長を本部長とする「旧優生保護法問題の全面解決推進本部」を設け、原告・支援者らに直接、心からのおわびをしました。議連PTで日本共産党は、子どもを持つ希望を絶たれた点で配偶者も苦しみは同じであり、中絶についても優生思想の被害者だと主張し、対象の拡大や補償額の上積みを求めてきました。
■差別と偏見なくす
法律には再発防止のため国が調査や原因究明、検証をすることが盛り込まれました。全会一致の決議には日本共産党の提案も受け「優生思想」という言葉が加えられ、「およそ疾病や障害を有する方々に対するあらゆる差別と偏見を根絶」する決意が表明されました。
今後、一刻も早くすべての被害者に補償金などを届けなければなりません。周知徹底、調査の主体となる自治体や関係施設への財政支援、第三者機関による徹底検証が必要です。
旧優生保護法は優生思想にお墨付きを与え命の選別を肯定し、誤った障害者観で差別を法制化しました。
日本共産党は今回の補償法成立を、人権意識の向上、いまもある優生思想や障害のある人への差別根絶に向けた施策の着実な実行の契機とするため先頭に立ち力を尽くす決意です。








