2024年10月14日(月)
主張
被団協にノーベル賞
今こそ核兵器廃絶に踏み出せ
日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)のノーベル平和賞受賞のニュースは世界を駆けめぐり、「核兵器のない世界」を願うすべての人々に限りない励ましと勇気を与えています。
■危機乗り越える力
アメリカの原爆投下による「この世の地獄」をかろうじて生きのびた被爆者は、その後も後遺症、差別や経済的苦難を強いられました。非人道的行為への非難を恐れたアメリカは、被害を隠蔽(いんぺい)し、日本政府もこれに追随して、被爆者は援護もなく放置されました。
しかし、ビキニ水爆実験被災(1954年)を契機に原水爆禁止運動が広がるなか、被爆者は「ふたたび被爆者をつくらない」決意をもって立ち上がり、56年に日本被団協を結成しました。そして、「自らを救うとともに、私たちの体験をとおして人類の危機を救おうという決意を誓い合った」(結成宣言「世界への挨拶(あいさつ)」)のです。
結成に尽力した山口仙二さん(2013年死去)は1982年、ニューヨークの国連本部で被爆者として初めて演説し、「ノーモア・ウォー、ノーモア・ヒバクシャ」と訴えました。内外でヒロシマ・ナガサキを伝える活動が、核兵器廃絶の流れを支えてきました。史上初めて核兵器を違法化した核兵器禁止条約も「ヒバクシャ」の「努力を認識する」と記しました。
国連のアントニオ・グテレス事務総長は受賞について「被爆者の絶え間ない努力と強さは、世界の核軍縮運動の背骨となってきた」とたたえました。
ロシアが核威嚇をくりかえし、アメリカや他の核保有国も「核抑止力」の強化をすすめるもとで、核使用の「瀬戸際」とも言われる危機的な状況があります。
ノーベル委員会のフリドネス委員長は授与会見で、核使用を許さない「核のタブー」を強調しました。今日、核兵器使用の手を縛っているのは、非人道的な核兵器を「悪」として「タブー視」する、被爆者を先頭につくられた世論と核兵器禁止条約の力です。
核保有国とその「核抑止力」に依存する国はいまこそ、被爆者の言葉に真摯(しんし)に耳をかたむけ、人類を破局の危機から引きもどす行動に踏みだすべきです。
国連の中満泉事務次長は、被団協の受賞は「世界に対する強烈なパンチ」だと言いました。「核兵器のない世界」への決意を新たに、世論と運動を飛躍させることが求められています。
■禁止条約に参加を
石破茂首相は被団協の受賞の意義を語る一方で、12日の日本記者クラブの党首討論で「核抑止力」にしがみつく姿勢をあらわにしました。被爆者が訴える核兵器の非人道性を認めるなら、その使用を前提にした「核抑止力」に依存するのは筋が通りません。
「核の傘」から脱し、核兵器禁止条約に参加すべきです。被爆者が一貫して求めてきた原爆被害への国家補償もすみやかに実現しなければなりません。
被爆者の平均年齢は85歳を超えました。次世代が決意を受け継ぎ、運動を支え発展させなければなりません。来年は被爆80年です。唯一の戦争被爆国にふさわしい政治を実現するため日本共産党は総選挙での躍進めざして力を尽くします。