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2024年10月10日(木)

日本社会のあり方の根本を問う

田村委員長、石破首相と党首討論

 日本共産党の田村智子委員長が9日、日本社会のあり方の根本を巡って行った石破茂首相(自民党総裁)との党首討論でのやりとりは次の通りです。

田村「豊かな社会とは、人間らしい暮らしを支える収入と自由な時間」「収入のカギは中小企業支援」

首相「(中小企業直接支援)正しいと思わず」

写真

(写真)石破茂首相(左)と論戦を交わす田村智子委員長(右)=9日、参院第1委員室

 田村 総理と日本の社会のあり方について議論をしたいと思います。本当に豊かな社会には、人間らしい暮らしを支える収入と、自由な時間、これが必要不可欠です。それこそが本当に豊かな社会と言えるのではないでしょうか。

 まず収入についてですが、物価高騰のもとで、政治の責任でどうやって賃上げを進めるのか。最大の鍵は、働く人の7割を占める中小企業への直接の支援が必要です。最低賃金を時給1500円、手取りで月収20万円程度へ、これはすぐに引き上げなければなりません。その実現のためには、やはり中小企業への支援が不可欠です。昨日の代表質問でも、このことを強調して直接支援をと求めました。しかし、総理の答弁は間接的な支援、「価格の転嫁」だと、こういう答弁だけでした。

 もう一度端的にお聞きします。やはり最低賃金の大幅な引き上げのためには、中小企業への直接の支援。ここが鍵、必要、不可欠だと思いますがいかがでしょうか。

 首相 委員と目指すところは一緒だと思っております。問題はその手法をどうするか。私どもは全体主義国家、社会主義国家ではないので政府が主導して、直接お金を払うやり方が必ずしも正しいとは思っていません。中小企業が、いかに労働者に十分な賃金を支払うだけの生産性を上げ、付加価値を上げるのか。従業員に支払いをする原資ができるかということに努力をしてまいりたいと思います。

 田村 結局、直接支援はやらないということですね。これを求めているのは日本共産党だけではありません。今年の地方最賃審議会でも大多数の都道府県から何らかの支援、中小企業への支援が必要だと、私たちと同じように直接支援を求める声は次々と上がっています。

 他国では直接支援で、最低賃金の大幅引き上げを行っています。これをやらないから日本はいつまでも賃金が上がらない国になってしまっていると言わざるを得ません。私たちは、中小企業への直接支援策を具体的に提案してきました。

 大企業の内部留保が驚くほど増えています。せめてアベノミクス以降で増えた分に時限的な課税をして、10兆円の財源をつくり、中小企業の賃上げの直接支援に充てれば、最低賃金1500円へ、ただちにすみやかに引き上げることができるのではありませんか。(政府は)慎重に検討と位置付けていますが、慎重にではなく、真面目にどうしたらできるのか、こういう立場で検討していただきたい。

田村「賃上げと一体の労働時間短縮を。『1日7時間、週35時間労働制』実現に政治の責任果たせ」

首相「生産性向上への支援がいまだ不十分」

田村「古い答弁の使い回しだ」

 田村 賃上げと一体の労働時間の短縮。これは私たちの新しい提案です。自由な時間を増やすには労働時間を短縮する、それでこそ人間らしい働き方、人間らしい生活を送れるようになるのではないかということです。日本の労働時間は長すぎます。欧州諸国と比べ、年300時間長いというデータもあります。

 実際に過労死、メンタル疾患、いまも深刻な社会問題となっています。博報堂の若者調査で、一番欲しいものランキングの第1位が「お金」、2位「時間」、3位「自由」と若い人たちが「自分の時間を大切にしたい」、「自由な時間が欲しい」―この思いを強めていることの表れだと思います。これはわがままでもないし、封じ込めなければならない思いでもありません。当然の要求です。

 もう一つ、私自身の実感もあります。子育て中、定時で帰ってもやることが多すぎる。頑張りすぎないと、仕事と家事育児は両立ができない。この頑張りすぎることを勲章にするようにしていては、後が続かない。社会が発展しない。私の実感です。ジェンダー平等社会をつくる上でも、労働時間を短くすることが急がれています。ただ働いて、食べて寝るだけの、そういう毎日は人間らしい生活と言えるのだろうか。学びたいこと、やりたいことに向き合える。家族との時間を大切にできる。社会とのつながりを築いて、さまざまな社会活動に取り組む。そのためには自由な時間が必要です。

 昨日の質問では労働時間の短縮をと求めました。総理も答弁でそれは必要だと認めました。そこで提案があります。ゆとりが欲しい、自由な時間が欲しい。この切実な声に応えて、「1日7時間、週35時間労働制」を大きな目標として、これを実現するために政治の責任を果たすべきです。

 首相 内部留保課税につきまして、それが二重課税になるかならないか、あるいは韓国で実施して本当にうまくいったのかどうかという検証は必要です。

 どうすれば労働者の賃金が上がっていくかにつきまして、私も強い問題意識を持っていますので、今後も議論させていただきたい。その上で労働時間のお話がありました。これはもっと短くなければいけないと思っております。長ければ長いほど生産性が上がるかといえば、そんなことは全くございません。

 同時に、日本の女性の睡眠時間がおそらく世界で一番短いことは決していいことだと思っておりませんし、男性の家事分担率が低いことはいいことだと思っておりません。フランスの育児政策を勉強したつもりですが、いかに男親が赤ちゃんの抱き方、ミルクのあげ方、離乳食のつくり方、お風呂の入れ方、そういうことをきちんと学んでいかないと女性の自由な時間は増えません。そういうことのために今後とも、取り組んでまいることはお約束を申し上げます。

 田村 お考えはわかりましたが、私の問いに答えていません。「1日7時間、週35時間労働制」に踏み出していくことが必要ではありませんかと質問しました。私たちは「自由時間拡大推進法」を提案しています。「法定労働時間1日7時間、週35時間労働制」にすみやかに移行することを国の目標とする。そのために、やはり中小企業支援です。これは欠かせられません。人手不足が言われている分野もあります。医療、教育、運輸、建設などでも労働条件の改善など必要な条件を行うための対策をとる。これは政府がやらなければならない。「1日8時間」さえ崩されている現状、これも正すためには、「残業規制の強化」、「サービス残業」、「不払い残業」はもう根絶しなければならないというパッケージの提案です。

 いまの(総理の)気持ちを本当に政治の責任で実現するためには、私たちのパッケージ提案を検討していただきたい。具体化していただきたい。

 首相 手法はいろいろございます。どうすれば労働時間が減るか、余暇をつくり、人間らしい暮らしをしていくことができるか。中小企業で可能にするためには、価格転嫁がきちんと行われなければなりません。

 きちんと価格転嫁が行われ、また生産性を上げるため、いま業種のご指摘がございましたが、生産性の向上に対する支援がいまだ十分だとは思っておりません。生産性を向上し、価格転嫁を円滑に行うことによって、労働者の方々に十分な賃金をお支払いする。その実現のために全力を挙げて取り組んでまいります。

 田村 石破総理の考えには新しい答弁がいろいろありました。だけど、政治の責任でどうやって賃上げするのか。労働時間を短縮するのか。ここについてはこれまでの古い答弁の使い回しです。これでは変わらない。政治を変えなきゃダメだということを申し上げて質問を終わります。


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