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2024年9月18日(水)

主張

公安警察の市民監視

違法な情報収集 直ちにやめよ

 平穏な市民運動を敵視し継続して監視している公安警察の行動が断罪されました。大垣警察市民監視違憲訴訟の名古屋高裁判決(13日)です。

 中部電力の子会社の風力発電計画が住環境に与える影響を懸念した住民は、勉強会や市長などへの嘆願書提出を行ってきました。これを敵視した岐阜県警大垣署警備課は、運動の拡大でトラブル発生のおそれがあるなどとして、住民の個人情報を収集・保有し、会社側に提供していました。

 判決は、大垣署員の行動は私企業の利益に肩入れし住民運動を妨害する目的だったと認め、「警察の活動は…不偏不党且(か)つ公平中正を旨とし…憲法の保障する個人の権利及び自由の干渉にわたる等その権限を濫用することがあってはならない」とする警察法に真っ向から反し「明らかに違法」と断じました。

 住民らの活動は犯罪や反社会的集団とは無関係な民主的・平和的なもので、国民全体の福祉や利益に役立つものだと評価しました。

■憲法違反を認める

 判決は、大垣署員らの行動を憲法に照らして判断し、公権力に対して個人の自由を保障し、個人情報をみだりに収集・保有・第三者に提供されない自由を保障する憲法13条(個人の尊重・幸福追求権)、集会・結社・表現の自由を保障する憲法21条に違反し、憲法19条(思想・良心の自由)からみて「非常に悪質」とのべ、保有する情報の抹消を命じました。

■国の開き直り断罪

 山谷えり子国家公安委員長(当時)は、日本共産党の山下芳生参院議員の質問(2015年)に対し、大垣署の行為は「公共の安全と秩序の維持」のために「通常行っている警察業務の一環」「権限の濫用には当たらない」と開き直りました。警察庁警備局長は、風力発電や道路工事などの事業の際に、住民の情報を収集し第三者に提供・意見交換することは「通常業務の一環」として行っていることだと認めています。

 今回の判決は、大垣署らの違法行為が通常の業務だと言うなら「大きな問題である」とし、「公共の安全と秩序の維持」を名目に法的根拠もなく「フリーハンドで活動することは許されない」と公安警察のやり方を断じました。

 違法で恣意(しい)的な運用がされていたにもかかわらず開き直る警察には「自浄作用が全く機能していない」と批判し、公安警察全体の個人情報収集・保有・提供に歯止めをかけました。

 情報開示や裁判での警官への証人尋問の要求を「今後の情報収集活動に支障を及ぼすおそれ」があると突っぱねた岐阜県警や、具体的事実を明らかにしない警察庁警備局長の態度も批判し、警察側に情報収集などの正当性を立証する責任があると指摘しました。

 公安警察は犯罪の発生とは無関係に、市民の民主的活動を敵視し、継続して情報収集し、予断や偏見をもって分析・活用しています。憲法の下でこうした活動は許されません。岐阜県警は判決に従い保有する個人情報を直ちに抹消し、公安警察は違法な市民監視をやめるべきです。

 個人情報に対する公権力の権限濫用を監視しチェックする仕組みが必要です。


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