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2024年9月17日(火)

主張

維新府立高校つぶし

競争を強いて学ぶ権利を奪う

 大阪府教育委員会は8月末、府立大正白稜(はくりょう)高校(大阪市大正区)と府立福泉(ふくいずみ)高校(堺市西区)の廃校方針案を示しました。決定されれば、2014年以降、21の府立高が維新府政で廃校にされることになります。

■廃校にする仕掛け

 この事態を招いているのは、維新の橋下徹元知事がすすめ、それを引き継いだ松井一郎元知事のもと、12年に成立した府立学校条例が「3年連続定員割れ」の府立高は「再編整備の対象とする」と定めたことです。

 吉村洋文知事は「府立高つぶし」との批判に、「(学校が)切磋琢磨(せっさたくま)してより良い教育を目指す」と言いますが、どの子にも「学ぶ権利」を保障する公立学校の役割を否定するものです。

 府教委は、毎年、公・私立の募集定員の合計が進学予定者を上回るようにすることを確認しています。今年度の入試では進学予定者数を4792人上回る数で募集が行われました。定員割れの学校が出るのは制度上の必然で廃校の根拠とするのは道理がありません。

 この条例のもと、交通不便な地域や進学を希望する子どもたちの「最後の砦(とりで)」の学校が廃校となり、希望する地域や条件で学べない状況が生まれています。

 今回対象とされた大正白稜高校は18年に二つの府立高の統廃合でできた学校で、わずか6年での廃校方針です。近隣の工業高校も既に廃校が決まっており、今回決まれば、かつて区内に三つあった府立高が10年でゼロになります。

 府南部に位置する阪南市は、25年3月に廃校となる泉鳥取高校を最後に「高校のない市(通信制除く)」となり、地域の教育環境の低下が懸念されています。

■教育条件整備に背

 府教委の方針案は「少子化」を理由にあげます。「少子化」なら学校つぶしではなく少人数学級・学校の規模縮小で教育条件の改善こそめざすべきです。しかし府は、1学級40人・1学年7クラスに固執し、それに背を向け続けています。

 大阪維新の会の府議は府議会で、府立高を民営化すれば老朽化に伴う費用を抑えられるとしたうえで「府立高校の完全民営化」を求めています。

 この条例は結局、すべての府立高が将来にわたり入試で不合格者を出し続けることを求め、子どもたちに過酷な受験競争を強い続けるものです。

 維新府政は08年以降、私学経常費助成を国基準以下に削減するとともに、生徒数に応じて補助金額を決める方式に変えました。その後、国の制度と合わせて「私立高校等授業料支援補助金制度」を導入する一方、府立高の学区制を撤廃、「切磋琢磨」の名で公立対私立、学校相互間の生徒獲得競争を激化させました。

 府立高普通科の志願倍率は二極化し、毎年「定員割れ」をはるかに上回る数の受験生が府立高を不合格になっています。公私問わず高校の教職員は年中、生徒獲得に奔走し、本来の教育活動に支障をきたすなど教育がゆがめられています。私学では経営が圧迫され非常勤が5割を超えるなど教育条件が低下しています。

 維新府政は、府立学校条例を抜本的に見直し、道理のない高校つぶしをやめ、学ぶ権利の保障と教育条件の整備を図るべきです。


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