2024年9月17日(火)
きょうの潮流
隙間もなく3歩あるけば壁の小さな箱。そこは完全な静寂に支配され、昼夜の感覚も失われ、暑くて息を吸うことすら大変だった―▼人間を缶詰にするそれは「白い拷問」と呼ばれます。五感のすべてを奪いとり、心身をむしばみ、心理的に追いつめていく。ノーベル平和賞の受賞作家で、今も獄中にいるイランの人権活動家ナルゲス・モハンマディさんが、同名の著書で過酷な独房拘禁を告発しています▼イランで女性の頭髪を隠す「ヒジャブ」のかぶり方が不適切だとして、22歳の女性が当局に拘束され死亡した事件から16日で2年となりました。それに合わせ、政治犯とされたモハンマディさんら34人の女性がハンストを決行しました▼事件後「女性、命、自由」をさけぶ抗議運動はイラン全土に広がり、体制側は激しく弾圧。今年の国会議員選挙の投票率がイスラム革命後最低となったことは、強権支配への国民の強い不信が示されています▼モハンマディさんは日本の新聞に寄せた獄中手記で、ヒジャブの強制は女性の支配や抑圧の手段だと。「女性の権利が閉ざされた扉からは民主主義や人権は、入ってこない」として、性別に基づく抑圧政策を犯罪とするよう国連や国際社会に訴えています▼性差別に対するたたかいは世界中で大きなうねりに。米国でも女性や性的少数者の人権を守れと行進する姿を、本紙外信面が伝えています。たとえ権力の鎖につながれようとも、自由を求めてあらがう声は、やがて社会を突き動かしていきます。