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2024年9月14日(土)

2024焦点・論点

米不足 原因と打開の方向

日本共産党農林漁民局長・参院議員 紙智子さん

減産強制の自民農政終わらせ 食料自給率向上への転換こそ

 スーパーや米屋の店頭から米が消え、各地で米が買えない事態が広がっています。その原因と打開の方向を、日本共産党農林漁民局長の紙智子参院議員に聞きました。(鈴木平人)


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 ―9月に入っても「米が買えない」状態が続いています。

 新米が少しずつ出回り始めていますが、「スーパーを5、6軒回ってようやく買えたが、5キロで3000円を超えていた」など高値に驚く声が寄せられています。千葉県八千代市では、8日に予定していた「カレーフェスティバル」が米不足などを理由に中止になりました。米どころである北海道や秋田でも、店頭には米がないと聞きました。

 「3日ぶりに20袋入荷したが2分で完売」(福島)、「50個が1時間で売り切れ」(静岡)など、テレビでも報じられています。

 子育て世代や年金生活者にとって、主食の米が手に入るかどうかは死活問題です。諸物価の高騰の中で、物価上昇に届かない賃上げにとどまる労働者にとっても重大です。それでも事態を静観する姿勢を崩さない政府に、国民の怒りが広がっています。

 日本共産党国会議員団として8月23日、政府に▽米不足の実態・実情を把握し関係者の声を聞く▽政府備蓄米の活用も含め、生産者団体や流通・小売業界と協力し店頭に米が十分に回るようにする―などを申し入れました。フードバンク・子ども食堂へ備蓄米を緊急に支給できるようにすることも求めました。いま各地で、地方自治体への要請も行われています。

 10日には、農民運動全国連合会と新日本婦人の会が共同で、緊急集会と農林水産省前での行動に取り組み、政府に緊急対策として備蓄米の放出と、米農家への支援を求めました。いま、この世論と運動を広げることが必要です。

 ―米不足の原因をどう考えますか。

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(写真)「政府は米の安定供給に責任を持て」と声をあげる人たち。前列は(左から)本村伸子、紙、田村貴昭の党国会議員各氏=10日、農水省前

 昨年の高温障害による品質低下や、8月の宮崎・日向灘地震で政府が発した南海トラフ地震臨時情報を受け、消費者が米を買いに走ったことが要因だと政府は言っていますが、米の供給量が少なかったことが最大の原因です。

 政府は6月末の時点の適正在庫は200万トン前後としていますが、今年は1999年以降で最低の156万トンしかなく、40万トンも少ない。この事実を政府は直視すべきです。

 飲食店など外食・中食用の米は長期契約で押さえているところが多く、156万トンの中にはそうした在庫も含まれています。結果として、スーパーや米屋に出回る量が減り、価格の高騰と、店頭で米が買えない事態となりました。

 ―6月に国会で米高騰・不足について質問していますね。

 5月、千葉県産コシヒカリが昨年10月から約2倍の60キロ2万5000円に急騰しており、廃業を考える業者も出てきていると東京都内の米屋から訴えがあり、6月の参院農林水産委員会で政府備蓄米の放出などを求めました。

 しかし政府は、高騰しているのは一部のスポット価格(卸売業者間の取引価格。比較的短期の契約が多い)であり、米の流通の過半を占める相対価格(JAなどの集荷業者と卸売業者との間で取引する際の価格。長期契約が多い)の上昇は10%程度で大きな影響はないと答弁しました。坂本哲志農水相も「販売店で欠品が多い状況ではない」と答え、何ら対策を取りませんでした。その結果、8月以降の事態を招きました。

 新米が出回りだしても米不足の状況は変わっていません。JAが生産者に前払いする概算金は、昨年に比べおおむね4000~5000円、産地によっては1万円以上、上がっています。これは、JAを介さずに生産者から直接米を買い取る業者が高値をつけるなど、需給逼迫(ひっぱく)による集荷競争が要因の一つと考えられます。

 ―米の供給量が減った原因は何でしょうか。

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 政府が、米の消費は減っているとして生産量の削減を求めてきたことが原因です。

 2013年に安倍晋三政権が閣議決定した「日本再興戦略」では、当時60キロ1万6000円(全国平均)だった米の生産コストの4割削減を掲げ、米価を9600円程度に下げることを目標にしました。

 さらに農政審議会の基本法検証部会では「稲作経営は、他品目と比べて農外収入が大きく、兼業主体の生産構造・稲作からの転嫁が進まなかった」とし、米生産の大半を占めていた兼業農家を敵視しています。その結果、兼業農家への支援をほとんどなくしていきました。

 そのため生産者米価が下がっても放置したのです。22年の米生産費は60キロ当たり平均で1万5273円です。相対価格の平均は1万3844円なので、大幅な赤字です。稲作経営は時給換算すると10円にしかなりません。

 こうした政策の下で生産基盤は減少を続けてきました。主食用の水稲作付面積は13年152万ヘクタールが23年には124万ヘクタールと28万ヘクタール減少しました。生産量は13年818万トンから23年には661万トンと157万トンの減少です。稲作農家は、10年約116万戸から20年には約70万戸と4割も減りました。

 自民党安倍政権は18年、米の直接支払交付金(7500円/10アール)や行政による減反を廃止し、稲作農家に「生産者が自らの経営判断、販売戦略によって、需要に応じた生産・販売」を求めています。生産者に自己責任を迫る新自由主義農政そのものです。

 今回の米不足は一過性のものではありません。生産基盤が弱体化しているので、今後も続く危険があります。しかも政府は、来年の6月末在庫を今年より少ない152万トンと見込んでいます。来年も米不足が再燃する可能性があります。

 ―打開のために何が必要でしょうか。

 市場競争にさらす政策では、国民の基礎的食料である米の需給の安定は保てません。生産を下支えする価格保障、所得補償と、そのための農業予算の抜本拡充が必要です。

 新自由主義にもとづく自民党の「亡国の農政」を終わらせ、食料自給率の向上にむけて人と環境にやさしい農政への転換が求められています。


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