2024年9月11日(水)
将棋第55期新人王戦 4強出そろう
関西勢3人、熱戦必至
本紙将棋観戦記者 木屋太二さん
将棋の第55期新人王戦(しんぶん赤旗主催)がすすみ、ベスト4が出そろいました。前々期第53期新人王戦優勝者の服部慎一郎六段(25)、前期第54期同優勝者の上野裕寿四段(21)、高田明浩五段(22)、プロ棋士目前の奨励会員・川村悠人三段(25)の4人です。各選手の特徴などを、本紙将棋観戦記者の木屋太二さんに聞きました。




今回、川村三段だけが関東勢で、それ以外の3人は関西勢です。将棋界は、「西高東低」の傾向が近年強まってきていますが、今回もその流れが反映していると思います。
関西所属の選手が多く、今期は、私が観戦記を担当したり、直接会ったりした方が少ないので、これまでの新人王戦の棋譜をもとに、印象をお話しします。
実力者ぞろい
まず、服部六段は、順位戦B級2組に所属しており、実力、実績から見れば、本命とみていいでしょう。局面の急所を見抜く感覚が鋭く、大局観がすぐれ、本筋の手が見える棋士です。
柔軟な中に強さがあり、競り合いに強く、修正能力も高い。序盤、中盤、終盤と穴が少なく、攻守のバランスがよい実力者です。
上野四段は、前期新人王。昨年、プロ棋士になって最初の公式戦が決勝三番勝負だったわけで、新人王戦はとても相性のいい棋戦です。当然、連覇を意識しているでしょう。
際どい局面から勝ち切る能力が極めて高い。形勢が苦しくなっても崩れずについていき、勝ちに結び付ける勝負強さが際立っています。
高田五段は、中・終盤力が優れた実戦派、力戦派です。異能派といってもいい。3回戦の柵木(ませぎ)幹太四段戦でみせた、自玉が薄い形であるにもかかわらず、強く踏み込んで勝った将棋が印象的です。よく手が見える緩急自在の指し回しで、難局を勝ちに結び付けるのがうまいと感じました。
粘り強い棋風
川村三段は、プロ棋士手前の奨励会三段ですが、在籍の年齢制限が迫っています。新人王戦で優勝すると、奨励会三段リーグ戦で次点を取ったとみなされる特典があり、次点2回でプロ棋士四段に昇段できます。これも、モチベーションを高めているのではないでしょうか。
準々決勝で、勝率が際立って高い藤本渚五段を破ったのは、素晴らしい勝局でした。棋風としては、粘り強くしぶとい。長手数の将棋になることが多く、負けそうになっても、ひっくり返すケースが多い。勝負強いですね。
奨励会の三段リーグ戦は持ち時間が1時間半なのにたいし、新人王戦は3時間。持ち時間が長い方が実力を発揮するタイプかもしれません。ダークホースといってよいでしょう。
最後になりましたが、4人とも居飛車党です。プロ棋戦でも最近は相居飛車が多いのですが、角換わり、相掛かりなど、相居飛車の最新形がみられると期待しています。熱戦は必至です。