2024年9月8日(日)
主張
教員の長時間労働
中教審は真の原因に目向けよ
教員が専門職としての役割を発揮し子どもたちに向き合うには、教員の異常な長時間労働をなくす必要があります。現状を放置すれば、専門性が発揮できないばかりか過労死や教員不足をますます悪化させます。
8月末に出た中央教育審議会(中教審)の「質の高い教師の確保」に関する答申は、教員不足を「憂慮すべき状況」だとし「教師を取り巻く環境整備を抜本的に改革する必要がある」とします。
ところが、出された方策は現場の声を無視し、教員の長時間労働の原因から目を背けるもので、「抜本的改革」に値しません。
現場の要求は、▽授業の持ち時間数の上限を定め教員の基礎定数を増やす▽残業代不支給制度の廃止―に取り組むことです。しかし、答申は両方とも拒みました。これでは日本の教育の前途が危惧されます。
■持ちコマ数の増加
教員の長時間労働の根本にある原因は、授業の持ち時間の多さです。
教員1人の授業負担は長い間「1日4コマ、週24コマ」とされ、それを満たすよう定数配置されてきました。1日8時間勤務のうち4時間を正規の教科指導、4時間を授業準備、その他の校務にあてるという考え方に立ちます。
しかし、国は2002年の学校週5日制完全実施にあたり教員定数を増やしませんでした。勤務日が1日減れば週に持てる授業数が減るのに、それに見合う授業数削減もなく、その後、授業数を増やしました。
そのため現在、多くの教員が1日5、6コマの授業をこなします。授業準備、打ち合わせ、保護者対応、書類作成など多くの仕事を時間外にせざるを得ません。
そのうえ、全国学力テスト、行政研修の増大など「競争と管理」の政策で教員の仕事を増やしました。また、部活動に必要な人員をつけず、教員に多大な負担を負わせています。
それに対して答申は、基礎定数改善を先送りし、加配定数増にとどめました。加配定数は数がまったく不十分なうえ、毎年度確保される保障がないため非常勤職員を充てざるを得なくなります。産育休・病休代替教員が確保できない現状に拍車をかけます。
■残業代不支給制度
長時間労働のもう一つの原因は、1971年に自民党が強行した公立学校教育職員給与特別措置法で公立学校の教員に残業代を支給しないとしたことです。残業させたら割増賃金を払う残業代の制度は、使用者のコスト意識に訴えて長時間労働を防ぐものです。この法的歯止めをなくした結果、教員はどれだけ残業したかも把握されず長時間労働が野放しになりました。
答申は残業代不支給制度廃止も否定しました。文科省は概算要求で、残業代不支給の代わりに月給に一律4%上乗せする教職調整額を13%にするとしますが、これは長時間労働の歯止めにはなりません。
こうした答申の根底には教育予算の抜本的増額に踏み込まない姿勢があります。長時間労働をなくし、教育現場の環境をよくするには真の原因に正面から対処することが必要です。そのためには軍事費ではなく教育に税金を使う政治に変えることが不可欠です。