2024年9月7日(土)
主張
内部留保過去最高
賃上げに活用して経済を回せ
企業の決算を集計した2023年度の法人企業統計で、資本金10億円以上の大企業の内部留保が539・3兆円(24年3月末)と過去最高となりました。
前年度比で5・5%増え、27・9兆円積み増しました。
■大企業は大もうけ
国民が物価高で苦しんでいるもと、その要因である円安で輸出大企業は大もうけしています。コロナ禍の影響を受けていた経済活動の再開もあり、経常利益は前年度比で12%伸ばし、8・4兆円増の76・3兆円となりました。3年連続で過去最高益を更新しました。
大企業の利益は、法人税減税など大企業向けの優遇策を進めたアベノミクスのもとで増えてきました。アベノミクスがスタートした12年度と比べると、23年度の経常利益は40・4兆円増で2・13倍です。内部留保は205・8兆円増で1・62倍です。
同期間に株主への配当金も2・40倍になりました。1人当たりの役員報酬は1711万円から2230万円に30%増えたのに対して、労働者1人当たりの給与は年収で560・2万円から633・4万円に13%増えただけです。
中小企業やパートを含む全労働者で、物価の影響を除いた実質賃金の統計で見ると、12年の年収404・6万円から23年には371・0万円に33万6千円も低下しています。
人件費を削減して目先の利益増を目指す経営が横行した結果、内部留保と株主への配当だけが増えるという、日本経済のゆがみが大きく拡大したのです。
格差と貧困の拡大は個人消費の低迷という日本経済最大の弱点を生み出しています。賃金を引き上げ、物やサービスの生産・販売など実体を伴う経済を活性化することが必要です。大企業が利益を増やしても、内部にため込んでいたのでは、経済は循環しません。
大企業の資産構成を見ても、工場や機械などの有形固定資産は、わずかしか投資が増えず、現金・預金や流動資産の有価証券と自己株式などのため込みが増加し続けています。
■中小企業の支援に
日本共産党は資本金10億円以上の大企業に対し、2012年以降に増えた内部留保額に毎年2%、5年間で10%の時限的課税を行うことを提案しています。これにより、毎年2兆円程度、総額で10兆円程度の新たな財源を生み、中小企業・中堅企業の賃上げ支援に回します。
その際、課税対象額から賃上げ額を控除することによって、賃上げをすれば税負担が減る仕組みとし大企業の労働者の賃上げも促進します。また、省エネや再エネをすすめる「グリーン投資」など国内設備投資額を課税対象から控除し、経済の持続可能な発展につなげます。
最低賃金を時給1500円に引き上げるためには中小企業・中堅企業への支援が欠かせません。
内部留保への課税という新たな税収で、社会保険料の企業負担分の軽減など、赤字企業も負担している固定経費を軽減できます。その分が賃上げに回るようにします。大企業でも中小企業でも賃上げがすすむことが日本経済を活性化する道です。