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2024年9月1日(日)

主張

災害への備え

能登半島地震の教訓くみとれ

 台風10号が記録的大雨をもたらすなか「防災の日」を迎えます。地球温暖化で台風が大型化し、地震が頻発する災害大国・日本で、自公政権が「国民の命を守る」と言うなら、何より必要なのは災害への備えと被災後の生活・生業(なりわい)支援に抜本的に予算をつけ、国として本気で取り組むことです。

■被害想定の甘さ

 南海トラフ地震への対策を考えるうえでも、1月に起きた能登半島地震の教訓を総括し、今後に生かすことが重要です。

 まず指摘すべきは、石川県の地域防災計画の想定の甘さです。想定していた地震は27年前のもので「ごく局地的」「災害度は低い」とし、被害想定も建物の全壊120棟、避難者2781人など実際の被害を大幅に下回っていました。専門家から見直しが求められていたのにされていませんでした。地域防災計画は災害時の具体的な業務や対策を定めており、甘すぎる想定が対応の遅れを招きました。

 道路上の瓦礫(がれき)などを撤去し緊急車両の通行を確保するための道路啓開計画策定が求められていましたができておらず、道路復旧の遅れが救援・復旧の遅れを生みました。大規模な地震災害を想定していなかったためだと報じられています。

 被害想定の問題は他の災害でも同じです。各地で過去に例のない量の雨が降り台風被害が少なかった地域に災害をもたらしています。震災に台風が重なる、地震、火災、津波、原発事故による広域・複合災害、冷房のない避難所や停電での熱中症リスク、規制緩和で建てられた高層マンションや臨海部への対応など、新たな問題を踏まえた真剣な見直しが求められます。防災を無視した開発をやめ、観測や研究体制の整備をすすめることが必要です。

 地震大国日本での原発稼働も厳しく問われます。事故が起きてから「想定外だった」などということは二度と許されません。

■圧倒的な人手不足

 能登半島地震で対応の遅れの重大な要因になったのは、避難所の設置・運営、支援物資の分配など救援・復旧のあらゆる場面でのマンパワーの決定的不足です。背景に、国の「行政改革」「市町村合併推進」による公務員削減があります。

 輪島市(旧輪島市と旧門前町)の職員は30年前に比べ合併を経て3割以上減りました。全国の地方公務員は1994年の328万人をピークに約30年で48万人減少。道路啓開計画策定の責任を負い、災害時に道路の緊急復旧に当たる国交省の地方整備局の職員は、政府の定員削減計画で20年間で2割削減されました。

 雑魚寝や冷たい食事など避難所の劣悪な環境の改善も急務です。イタリアや台湾などに学び、キッチンカーやトイレカーはじめ必要な物資を、国・都道府県・市町村の分担と連携で大規模に備蓄し緊急に投入できるシステムを、自治体任せでなく国が責任をもってつくるべきです。

 それを現場ですばやく救援に当てるにも人の確保が欠かせません。自治体間で応援職員の派遣をするうえでも、国の公務員削減政策を中止し、増員に変える必要があります。

 災害対応を自治体・被災者任せにせず、国が責任を持つことこそが必要です。


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