2024年9月1日(日)
きょうの潮流
10年前、2014年に文部科学省が社会科の教科書検定の基準を改定しました。「通説的な見解がない事項についてはその旨を明示する」「政府の統一見解を踏まえた記述にする」などの項目が加えられました▼改定によって教科書への統制が強まりました。その一つが関東大震災直後に起きた朝鮮人虐殺の記述です。虐殺された朝鮮人の人数について「通説的な見解がない」として、修正させました▼「6000人以上」など具体的な人数を書いていた教科書が「おびただしい数」といったあいまいな記述に変えられ、人数が定まっていないとの言葉が加えられました。教科書の記述は、研究者や市民の努力による貴重な研究の成果です。それを権力的に書き換えさせたのです▼「不都合な真実」を隠そうとする動きは今も。昨年、松野博一官房長官(当時)は朝鮮人虐殺について、「政府内に事実関係を把握することのできる記録が見当たらない」と述べました。虐殺について公文書を含め、多くの資料があるにもかかわらずです。小池百合子東京都知事は、犠牲者の追悼式典に追悼文を送ることを拒み続けています▼日本が朝鮮を植民地支配し、差別していたことが虐殺の背景にあります。いまだに行政の長が歴史から目を背けていることが差別の容認につながっています▼事件から101年の9月が巡ってきました。植民地支配や民族差別への反省が進む国際社会から日本は取り残されています。政治を変えることが切実に求められています。