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2024年8月29日(木)

主張

高級リゾート誘致

国立公園の自然価値損ねるな

 観光を目的にした訪日外国人旅行者が増えています。7月の外国人旅行者数は約329万人と1カ月当たりで過去最高を記録しました。10カ月連続でコロナ前の2019年の水準を回復しているとされます。

■インバウンド狙い

 こうしたなか、自公政権の観光立国推進閣僚会議は、民間活用により全国35すべての国立公園を31年までに「世界水準のナショナルパーク化」する方針を打ち出しました。

 主に外国人観光客(インバウンド)の増加を目指す国の「国立公園満喫プロジェクト」では、「世界水準のナショナルパーク」実現に向け「高付加価値」「質の高いホテル誘致」として、未開発の地域における宿舎の追加、大手開発業者に要請―などを掲げており、閣僚会議の方針は全国の国立公園に高級リゾートホテルを誘致するのが狙いです。

 こうした動きに、群馬県尾瀬など貴重な自然を守ってきた人々からは、観光客が増えることを期待する一方、自然を今まで通り守れるのかなどの声が出ています。行政の担当者も「尾瀬は自然保護運動の歴史があり、かなり反対が出ると思う」と語っています。

 日本自然保護協会は、すべての国立公園に高級リゾートホテルなど大規模宿泊施設をつくる方針に対し「自然環境保全上の問題が多い」との意見書を国に提出しました。

 特に、尾瀬、南アルプスなど山小屋以外の宿泊施設がない国立公園に大規模宿泊施設を誘致することは「自然環境および景観の破壊をもたらし、各々の国立公園の価値を喪失させる」と指摘しています。

 政府は「国立公園の最大の魅力は自然そのもの」と掲げています。ならば自然環境の保全が何より重要です。すべての国立公園に高級リゾートホテルを誘致する方針は撤回すべきです。

 登山道・遊歩道の整備や、地元関係者の参画と合意を得たうえでの廃屋化した宿泊施設の撤去や再生などの施策こそ求められます。

 国立公園を指定する自然公園法は「優れた自然の風景地を保護する」「利用の増進を図ることにより、国民の保健、休養及び教化に資する」「生物の多様性の確保に寄与する」ことを目的とし、「我が国の風景を代表するに足りる傑出した自然の風景地」を国立公園として指定するとします。

■地域の創意生かし

 しかし、国や財界が旗を振る現在の「観光立国」政策は、インバウンドを拡大し、観光を消費拡大の手段とし「稼ぐ」ことを第一義としています。政府の方針は自然の風景地を壊すもので法の目的にも反します。

 観光は、地元に経済的な豊かさや雇用を生むなど地域も幸せを感じるものでなければなりません。ところが多くの観光地では急増する観光客によって引き起こされる、騒音、ゴミの散乱、公共交通の混雑など生活環境への影響が問題となるオーバーツーリズムが社会問題になっています。

 06年に制定された観光立国推進基本法は「地域における創意工夫を生かした主体的な取組を尊重し」観光を促進するとしています。その原点に立ち戻り、地域住民の声と観光客の意見を反映した国立公園のあり方を検討すべきです。


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