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2024年8月25日(日)

主張

再エネの出力抑制

地球沸騰化回避へ政策転換を

 お盆を過ぎても、連日のように熱中症警戒アラートが発表され、世界の平均気温も観測史上最高を更新しています。国連のグテレス事務総長は「気候崩壊が始まった」と危機感を示し、各国政府に対策の加速化を強く促しています。

 回復不能となる「気候の転換点」に近づいている今、産業革命前に比べて地球の平均気温上昇を1・5度以内に抑えるため、一刻も早く温室効果ガスの排出を大幅削減しゼロを目指すことが求められています。

 そのためにも、昨年12月に閉幕したCOP28(国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議)で日本も含め118カ国が誓約した再生可能エネルギーの設備容量3倍化の実現が重要です。

■750億円分無駄

 ところが日本は3倍化どころか、今ある再エネ電力さえ大量に無駄にしています。太陽光を中心にした再エネ発電に取り組む事業者の発電を、送電を担う大手電力が一方的に止める出力抑制が急増し、2024年度の再エネ出力抑制量の見通しは、全国で22年度の4・2倍にも上ります。

 この抑制にはなんの補償もないため、多くの再エネ事業者の経営が悪化し、撤退の危機にさらされているのが現状です。

 電力会社エリアごとの24年度の再エネ出力抑制量は22年度比で、東北電力は6・3倍、中国電力は14・3倍、四国電力は12・4倍に急増する見通しです。

 日本共産党の岩渕友参院議員は4月、これは58万世帯分の年間消費量に匹敵し、家庭の電気料金では750億円分もの損失になると指摘。EU(欧州連合)のように再エネ最優先使用のルールに転換するよう斎藤健経産相に迫りました。

 経産省は、電力の発電量と消費量のバランスが崩れて停電が起きないようにするといって、消費量の変動に応じた電源の出力抑制の順番を定めた「優先給電ルール」を定めています。

 (1)火力発電の出力抑制、揚水・蓄電池の活用(2)他地域への送電(3)バイオマスの出力抑制などで対応し、それでも消費量を上回れば再エネを出力抑制し、原発の出力抑制は「技術的に困難」として最後になっています。経産省は8月、蓄電池をセットで運用する再エネ事業者は出力抑制の対象外とする方針案を示しました。他方で、それ以外の事業者の出力抑制は増加するとしています。

■原発は抑制せずに

 原発の出力抑制の実績はなく、火力発電の出力抑制も不十分なまま再エネにしわ寄せしていることが明らかになっています。中国電力は24年度に再エネの出力抑制を急増させる要因として、島根原発2号機の営業運転再開を挙げています。

 再エネは、燃料を輸入に頼る原発や火力発電と違い、エネルギー自給率向上にも寄与し、世界的にも最も安価な発電手段です。ところが政府はエネルギー基本計画の改定作業でも、「脱炭素」を口実に原発の「最大限活用」と石炭火力の延命に固執しています。

 危険で高コストな原発をゼロにし、石炭火力発電の廃止期限を決め、若い世代も安心して暮らせる社会の実現に向け、思い切った省エネと再エネを最優先にしたエネルギー政策に転換すべきです。


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