2024年8月21日(水)
主張
大浦湾で工事強行
問答無用の暴挙は許されない
沖縄県名護市辺野古の米軍新基地建設をめぐり岸田文雄・自公政権はまたも問答無用の暴挙に出ました。
防衛省は20日、海底に軟弱地盤が広がる大浦湾で、埋め立て予定海域を囲む護岸の造成工事に着手しました。沖縄県が環境保全対策などで協議が調うまで工事を行わないよう再三求めてきたのを無視しての強行です。
■豊かな自然を破壊
大浦湾は、世界有数の巨大サンゴ群が広がり、生物多様性に富む海域です。防衛省の環境影響評価の調査でも、絶滅危惧種262種を含む5300種以上の生物が確認されています。防衛省が今後実施を狙う、軟弱地盤の強度を高める改良工事では7万本超の杭(くい)を打ち込む予定で、大浦湾のかけがえのない自然に深刻な影響を与えることは避けられません。
埋め立て工事が本格化すれば、沖縄戦の激戦地だった本島南部の土地から犠牲者の遺骨が混じる土砂を採取し使用される恐れもあり、断じて許されません。
今回の着工は、沖縄県民が県民投票や知事選などで何度も示してきた辺野古新基地反対の民意と沖縄の地方自治を強権で押しつぶすという点でも重大です。
軟弱地盤の改良を含む大浦湾での埋め立て工事は、玉城デニー県知事が環境保全や災害防止に十分配慮していないことなどを理由に不承認にしていました。ところが、政府は、国民(私人)の権利救済を目的にする行政不服審査法を乱用し、知事の不承認を取り消し、承認を迫りました。それでも知事が不承認の態度を変えなかったのに対し、政府は代執行の手続きに入り、裁判所の不当判決を受け、自らが知事に代わって承認したのです。
代執行後、防衛省は今年1月に大浦湾で資材などを置く海上ヤードの設置工事を開始するなど、本格着工に向けて既成事実を積み上げてきました。6月には大浦湾での護岸造成工事を8月1日に始めると県に通告し、7月には杭打ち試験を強行しました。実際の着工は、台風の影響で延期されていました。
■「留意事項」違反
埋め立て工事をめぐる県と防衛省の協議は工事の前提条件です。
2013年、当時の仲井真弘多知事は埋め立て計画の承認に際し、工事の実施設計や環境保全対策などについて防衛省は県と協議すると明記した「留意事項」を付しました。これに基づき県は今年2月以降、数度にわたって防衛省に質問状を送り、協議は継続していました。それを一方的に打ち切っての着工は明白な「留意事項」違反です。
辺野古新基地建設は、政府の計画通りに進んでも完成は2030年代半ば以降とされます。大浦湾の埋め立て予定海域にある軟弱地盤は最も深い地点で水面下90メートルに達しますが、作業船の能力として実際に地盤改良できるのは70メートルまでです。難工事が予想され、工期がさらに延びることは確実です。
政府の試算でも今後10年以上かかり、完成自体が不確かな辺野古新基地建設を「一日も早い普天間基地の危険性除去」のためと言うのは奇弁にほかなりません。工事は直ちに中止するしかありません。