2024年8月18日(日)
海自実習幹部の靖国「研修」
集団参拝へ誘導?
侵略戦争美化・戦死賛美の「遊就館」に
自衛隊・防衛省
海上自衛隊練習艦隊の実習幹部が今年5月、靖国神社(東京都千代田区)を訪れ、境内にある展示施設「遊就館」で「研修」を行っていたことが17日までにわかりました。部隊での参拝を禁じた事務次官通達違反が疑われる自衛隊幹部の集団参拝が発覚した中で、「研修」が行われた格好です。「研修」を名目として集団参拝を仕向ける自衛隊・防衛省の姿勢も浮き彫りになってきました。
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練習艦隊の実習幹部の参拝については、昨年5月に165人が同神社を参拝した問題を本紙が報道(2月17日付)。防衛省はいまだに「事実関係を調査中」としています。
そうした中、「研修」が5月10日に行われたと、「朝日」(14日付)が報じました。この「研修」をめぐる本紙の取材に、防衛省は、同神社への集団参拝の有無など、「部隊への事実確認等に時間を要する」として、明らかにしていません。
昨年5月の参拝に関する調査結果がまだ出ない中での同神社への訪問は批判を免れません。
今年5月の「研修」を受けた実習幹部は、海上自衛隊幹部候補生学校で一般候補生課程を卒業した者です。実習幹部は同月20日から175日間の遠洋練習航海に出発しています。
同神社の社報「靖国」を本紙が調べたところ、遅くとも1998年から実習幹部が同神社を集団参拝しています。新型コロナ感染症が流行した時期をのぞき、毎年、参拝していました。
研修する「遊就館」のそばには、同神社の拝殿と本殿があります。「研修」の合間に、容易に参拝ができます。この間、相次ぎ発覚した自衛隊の集団参拝では、「研修」と称して靖国参拝をお膳立てされていることが明らかになっています。
昨年5月の集団参拝では、停泊地から公用バスで靖国神社付近まで海自の実習幹部を運んでいました。
その際の防衛省は「研修の休憩時間を利用し、個人の自由意思により靖国神社を参拝した」と説明しました。隊員の“自由意思”となっていますが、練習艦隊の司令官が参拝しており、数カ月間の遠洋練習航海を前に、実習幹部が参拝に不参加の意思表示ができるのか、疑問です。
2019年には、陸自高等工科学校の生徒も「遊就館」で研修を行っています。「遊就館」に置かれた自由記述のノートには、研修があった時期に「私は陸上自衛隊高等工科学校生徒として日々勉学に励んでおりますが、靖国神社を参拝し、もっと努力しなければならないと思いました」とする記述がありました。生徒が「研修」の前後に参拝したとみられます。
「遊就館」は旧日本軍の侵略戦争を美化する靖国史観の宣伝施設というべきもの。展示では、同神社にまつられた「英霊」たちの戦死を「玉砕」「沈みゆく艦と運命を共にした」などと賛美する内容です。