2024年8月17日(土)
米軍内での性暴力件数
政府発表の2~4倍か
現役女性兵士の24%被害
米大学が調査結果発表
【ワシントン=洞口昇幸】米軍内で発生している性暴力の件数は、米政府の公表よりも実際は2~4倍も多い可能性があることが明らかになりました。米ブラウン大学ワトソン国際公共問題研究所が14日に発表した報告書で示されました。
23年の件数は、国防総省の発表では2万9000。ところが報告書によると、他の複数の学術研究データを統合して分析し推計したところ、7万3695になりました。国防総省の発表の2・5倍です。この20年間では「2~4倍」になっています。
また、アフガニスタン、イラクへの侵略となった2001年からの「対テロ戦争」の20年間について、性暴力の防止が課題となりながら、国防総省の推計でも21年は約3万5900件と01年の水準とほぼ変わりません。
一方、報告書によると性暴力の被害にあった現役女性兵士は、20年間の平均で24%で、4人に1人の割合です。現役男性兵士は1・9%で、特に有色人種の女性や性的少数者が被害にあう危険が高くなっています。
報告書は、米軍は13年に女性の戦闘任務を解禁し、軍の全任務を女性に開放するなど「ジェンダー平等」を進めながらも、「職場では暴力とミソジニー(女性蔑視)が続いている」と批判。イラクやアフガンで作戦準備を優先したことが、「性暴力問題の深刻化、内部的隠ぺい、組織内のジェンダー不平等」を許してきたと指摘しました。
今回の報告書は、米国の01年来の「対テロ戦争」に伴う「代償」と「軍国主義」の詳細を明らかにするプロジェクトの一環。「根強いジェンダー不平等を示す指標の一つである性暴力の広がりに焦点をあてた」とし、国防総省のデータと他の研究などを比較・調査しました。
米軍内での性暴力問題は、アフガン侵攻(01年~)に関わった兵士が02年に妻を殺害した事件や、アフガン、イラクでの作戦に関わる中央軍の管理下で02~04年に83人の女性兵士がレイプなどの被害にあったことが明らかになり、社会的な批判が高まりました。国防総省は05年以降、内部報告に基づき性暴力の発生件数を推計し、米議会に提出しています。