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2024年8月15日(木)

岸田首相の政権投げ出し

 岸田文雄首相が14日、自民党総裁選への不出馬を表明しました。「赤旗」日曜版のスクープで暴露された裏金事件、国民が生活苦にあえぐもとでの経済無策、憲法破壊の大軍拡などへの国民の批判に追いつめられた結果です。問われているのは自民党政治そのものです。

共産党・「赤旗」が追及

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(写真)自民党5派閥の政治資金パーティーをめぐる疑惑をスクープした赤旗日曜版(2022年11月6日号)

 岸田文雄首相は、自民党総裁選への不出馬を表明した会見で、「派閥の政治資金パーティーを巡る政治とカネの問題など国民の政治不信を招く事態が相次いで生じた」「私が身を引くことでけじめをつけ(る)」と述べました。自民党裏金事件で政治の信頼を失ったことを自ら認めた形です。

 裏金事件発覚の発端は、自民党派閥の政治資金パーティーの政治資金規正法違反(不記載)を告発した「しんぶん赤旗」日曜版のスクープ(2022年11月6日号)でした。日本共産党は、国会などで自民党の組織的犯罪という核心を突く論戦で裏金事件を徹底追及。「赤旗」もスクープと批判企画を連打しました。国民のたたかいと一体となって世論が広がり、内閣支持率は最低を更新し、長期にわたって2割台に低迷するなど、自民党政治を断崖絶壁に追い込みました。

 一方で岸田首相は会見で、政治とカネの問題で「派閥解消」、自身の政治倫理審査会への出席、パーティー券購入の公開基準引き下げなどを挙げ、「政治改革を前に進めるとの強い思いを持って、国民の方を向いて重い決断をさせていただいた」と発言。「残されたのは自民党トップとしての責任だ」とし、自身が責任を取れば裏金事件が決着すると言わんばかりでした。

 しかし、この間、自民党がやったことは、裏金事件への反省もなく真相究明にふたをし、企業・団体献金の禁止に触れず政策活動費を合法化するなど、抜け穴を温存する政治資金規正法の改悪といった「政治改革」の名に反するものでした。

 日本共産党は、政治資金規正法改定の論戦で、企業・団体献金の禁止で金権腐敗の根を断つことが真の政治改革だと指摘。自民党が企業・団体献金禁止に踏み出すことができない背景には、財界・大企業から献金を受け、その目先の利益のために貢献する自民党政治があることなどを明らかにし、その本性を暴きました。

 報道各社の世論調査では、改定規正法は裏金事件の「再発防止につながらない」「効果がない」が7~8割にのぼっています。企業・団体献金の全面禁止は、国民のなかで大きな世論となっています。

 岸田首相は「自民党が変わることを示す最もわかりやすい最初の一歩は、私が身を引くことだ」と述べましたが、自民党の本性を見れば誰が次の総裁になっても国民の信頼を取り戻すことはできないことは明らかです。

行き詰まりがあらわ

 自民党政権は、安倍、菅、岸田と3代続いて途中で政権を投げ出しました。岸田首相の総裁選不出馬表明会見では自民党政治の深刻な行き詰まりとともに、その無反省ぶりもあらわにしています。会見で首相は3年間で「賃上げ」「原発再稼働」「少子化対策」「防衛力の抜本強化」などの「大きな成果を上げることができたと自負している」と誇りました。

 しかし、憲法解釈を平然と変え、戦後の日本が堅持し続けた憲法9条などの基本理念さえも崩してきた自民党政権のタガがはずれた暴走政治を浮き彫りにしたのが岸田政権です。2022年12月、「安保3文書」を閣議決定。5年間で軍事費43兆円という大軍拡の道へと突き進みました。安倍・菅政権から引き継いだ敵基地攻撃能力の保有もちゅうちょなく押し通しました。

 さらに今年4月の日米首脳会談での合意にもとづき、自衛隊を米軍の指揮・統制下に深く組み込み、日米一体で敵基地攻撃能力を運用する体制を構築。日本の主権まで米国に差し出す対米従属を強化させました。加えて、7月28日の日米安全保障協議委員会(2プラス2)では「拡大抑止」に関する閣僚会合を初めて開催。核戦争体制づくりの議論の継続を確認しました。非人道的な惨禍を引き起こす核で相手国を威嚇する「核抑止」論です。

 人権をめぐる問題でも世界の流れに逆行する姿を示しました。結果を出してきた例として挙げたのが旧優生保護法下による被害者への直接の謝罪や除斥期間の撤回などです。

 しかし、政府は長い期間、賠償を拒否し続け、不法行為から20年たつと賠償請求権が消滅する「除斥期間」の適用を主張してきました。最高裁判決を機にこの主張は撤回しましたが、被害者の長期間の苦しみは消えません。

 首相は経済政策でも無為無策を露呈。「30年続いたデフレ経済に終止符を打つ」「実質賃金がプラスに転じた」「最低賃金も過去最大の上げ幅を実現した」などと豪語しました。

 ただ、実質賃金は1996年をピークに年74万円も減少。12~23年で33万6000円減少しています。さらに、2度にわたる消費税率の引き上げで17・3兆円、1人当たりで13万9000円も国民負担が増えました。加えて、アベノミクスの「異次元の金融緩和」がもたらした異常円安で、かつてない物価高騰による生活苦が引き起こされています。

 原発再稼働に固執する姿勢もあらわです。「可能な限り原発依存度を低減する」としていた方針を首相は「最大限活用する」という方針へ急転換。23年には新増設や老朽原発の60年超の運転を可能にする「GX推進戦略」を閣議決定し、エネルギー基本計画に反映させました。

 国民の願いに逆行する自民党政治。国民の怒りが広がる中で、総裁選への不出馬を表明しましたが、自民党内での政権たらい回しでは、政治が変わらないことは明らかです。

改憲には異常な執念

 岸田首相は14日の会見で、「自衛隊の明記と緊急事態条項について条文の形で詰め、初の発議までつなげていかなければならない」と述べ、改憲に向けて異常な執念を見せました。

 岸田首相は、憲法9条への自衛隊明記などの論点整理について、今月中に行うよう指示したとして「着実に実行したい」と強調。「私の政治人生、そして政治生命をかけて、一兵卒として、引き続きこうした課題に取り組んでいく」「9月までの任期中、総理・総裁としての私の責任において、できるところまで最大限進めていく」とまで述べました。

 自民党総裁選に出馬せず、首相を退任することになる岸田首相が改憲を強調したことには、総裁選を利用して9条改憲を大々的にアピールする意図があるとみられます。

 総裁選への出馬が取りざたされている石破茂元幹事長、小泉進次郎元環境相、小林鷹之前経済安保担当相らが改憲発言を繰り返しているなか、さらに改憲をあおる危険な狙いがあらわになっています。

岸田政権の足跡(役職はいずれも当時)
2021年
9・3 菅義偉首相が総裁選への不出馬を表明
10・4 岸田政権発足
31 総選挙投開票
11・10 第2次岸田政権発足
12・6 岸田首相、国会で「敵基地攻撃能力」の検討を明言
2022年
5・11 経済安全保障法を強行
23 日米首脳会談。軍事費の「相当な増額」を表明
6・7 軍事費を「5年以内に抜本的に強化」とした「骨太の方針」を閣議決定
7・8 安倍晋三元首相、銃撃され死亡
10 参院選投開票
8・10 第2次岸田改造内閣発足
9・27 安倍氏「国葬」を強行
10・13 河野太郎デジタル相が24年秋の健康保険証廃止を目指すと表明
11・6 「赤旗」日曜版が自民党裏金事件の端緒となる問題を報道
12・16 敵基地攻撃能力保有などを明記した「安保3文書」を閣議決定
22 原発新設と60年超運転の方針と工程を決定
2023年
5・31 原発推進等5法(GX電源法)を強行
6・2 改定マイナンバー法を強行
軍需産業支援法を強行
改悪入管法を強行
16 軍拡財源法を強行
16 LGBT法を強行
8・24 福島第1原発の汚染水(アルプス処理水)の海洋放出を開始
9・13 第2次岸田再改造内閣発足
10・1 インボイス(適格請求書)制度の開始
11・27 米国で核兵器禁止条約の第2回締約国会議(~12・1)。日本政府は2回連続の不参加
12・13 改悪国立大学法人法を強行
14 裏金疑惑を受け、岸田首相が安倍派の4閣僚の交代人事を決定
19 東京地検特捜部が政治資金規正法違反の疑いで安倍派事務所などを家宅捜索
28 沖縄県名護市辺野古の米軍基地建設をめぐり、軟弱地盤の改良工事に伴う設計変更を承認する「代執行」を強行
2024年
4・10 日米首脳共同声明で米軍と自衛隊の「シームレスな統合」を明記
28 衆院3補選で野党が完勝
5・10 兵器共同開発推進のための秘密保全体制を整備する経済秘密保護法を強行
10 統合作戦司令部の創設を盛り込んだ改定防衛省設置法を強行
17 離婚後も共同親権を認める改定民法を強行
6・5 社会保険から支援金を上乗せ徴収する改定子ども・子育て支援法を強行
次期戦闘機共同開発条約を承認
14 永住許可を取り消す規定を新設した改定入管法・技能実習法を強行
19 抜け穴だらけの改定政治資金規正法を強行
19 国の自治体への指示権を拡大する改定地方自治法を強行
7・28 日米安全保障協議委員会(2プラス2)と「拡大抑止」に関する初の閣僚会合を開催
8・14 岸田首相が総裁選不出馬を表明

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