2024年8月14日(水)
追及 自民裏金事件
軍需産業の献金 巨額受注で還流
安倍政権から岸田政権へと続く大軍拡の推進によって、武器などを受注する軍需産業が空前の利益を得ています。自民党への巨額の献金が、その何倍もの受注となって還流する―。自民党と軍需産業の癒着の構造があります。
通常国会では、英国・イタリアとの次期戦闘機の共同開発・生産、第三国への輸出を推進する政府間機関「GIGO」を設立する条約が自民党などの賛成で承認されました。
兵器の開発も
次期戦闘機の開発を受注したのは三菱重工です。同社が2022年までの10年間に自民党の政治資金団体「国民政治協会」に献金した額は3億2700万円。一方、防衛省の中央調達(武器や燃料などの購入)の契約額は過去10年(14~23年度)で4兆4843億円にも上ります。
同社は、岸田政権が安保3文書に基づいて導入を進める敵基地攻撃能力保有に関する兵器の開発も引き受けています。12式地対艦誘導弾、島しょ防衛用高速滑空弾、極超音速誘導弾、潜水艦発射型誘導弾といったミサイルなどを大量受注しています。
次期戦闘機の開発には、IHIと三菱電機も参画。自民党への献金は過去10年でIHIが1億円、三菱電機が1・9億円です。両社は過去10年の中央調達受注額トップ10(表)に入っています。これらの軍需産業は防衛省・自衛隊から天下りを受け入れています。カネと人、利権と癒着がはびこっています。
国民増税狙う
ビジネスチャンス拡大を狙う軍需産業は、自民党政治を動かしてきました。22年4月に経団連が出した「防衛計画の大綱に向けた提言」は、「防衛産業基盤の整備・強靱(きょうじん)化に資する政策を体系的に実施すると表明する必要がある」と強調。政府が主導する武器輸出体制の強化を要求しました。
同年12月に閣議決定された安保3文書の一つ「国家防衛戦略」では「必要に応じた企業支援を行うこと等により、官民一体となって防衛装備移転を進める」と軍需産業支援を表明。23年には軍拡財源法はじめ軍需産業支援法、防衛装備品基盤強化法などが次々成立し、早くも要求が反映されます。
さらに、今年の通常国会では、兵器の共同開発を推進するために民間企業でも同盟国・同志国と同等の秘密保全体制を整備する経済秘密保護法が成立。海外での受注機会の拡大を狙う軍需産業側の要求が背景にありました。
同法で秘密を扱う資格者を認定する「セキュリティー・クリアランス(適性評価)」制度の対象を民間労働者に拡大することについて、経団連は「セキュリティー・クリアランスは、企業が国際共同研究開発等に参加する機会を拡大することにも資する」とし、同法の早期成立を要求していました。
今年2月、防衛省が設置した安保3文書に基づく大軍拡を推進するための「防衛力の抜本的強化に関する有識者会議」で、座長の榊原定征経団連元会長が軍事費について「見直しをタブーとせず」として、さらなる増額に言及。同会議のメンバーには三菱重工の宮永俊一会長も加わっています。大軍拡による受注で利益を得る企業が、軍事費増額の議論をするメンバーという異常さです。
軍需産業がばく大な利益をあげる大軍拡の財源確保には国民への増税が狙われます。政治のゆがみが極まっています。
受注企業 | 中央調達 契約額(2014~23年度) | 天下り人数(2013~22年度) | 自民党への企業・団体献金(2013~22年) | |
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1 | 三菱重工 | 4兆4843億円 | 33 | 3億2700万円 |
2 | 川崎重工 | 1兆9724億円 | 29 | 2950万円 |
3 | 日本電気 | 1兆1137億円 | 42 | 1億5300万円 |
4 | 三菱電機 | 1兆581億円 | 37 | 1億9100万円 |
5 | 富士通 | 7564億円 | 21 | 1億4800万円 |
6 | 東芝インフラシステムズ(※2016年度以前「東芝」) | 5341億円 | 32 | 5700万円 |
7 | IHI | 4873億円 | 24 | 1億円 |
8 | 小松製作所 | 2670億円 | 9 | 8000万円 |
9 | 日立製作所 | 2660億円 | 12 | 3億6750万円 |
10 | 日本製鋼所 | 1971億円 | 9 | (※加盟する「日本鉄鋼連盟」による献金・6億6000万円) |
防衛省資料、政治資金収支報告書などから作成。自民党への献金は政治資金団体「国民政治協会」に対するもの。天下りは防衛省・自衛隊から。本省課長相当以上、自衛官1佐以上を対象 |