2024年8月11日(日)
きょうの潮流
自ら課題を見つけて「答え合わせ」をすること。世界的な登山家は登山の楽しみをそう語っていました。同時に登山は片道切符ではない、ひとつしかない命を守るために最善の方法を考えるようにしていると▼山の魅力と怖さを知り尽くし、登山界最高の栄誉「ピオレドール(黄金のピッケル)賞」を3度受けた平出和也さん。先月末、同じトップクライマーの中島健郎さんとともに世界2位の高峰K2で滑落しました▼経験豊富なクライマーの滑落事故は山の恐ろしさを改めて示しました。登山家に限らず、こうした山の事故は増加傾向に。昨年の山岳遭難件数は3126件、遭難者総数は3568人と、いずれも統計をとり始めた1961年以降で最多となりました▼最多更新は2年連続。コロナ禍に伴う行動制限が緩和されたことに加え、アウトドアの活動が注目され登山者が増えていることが背景にあります。気軽に山に出かけて遭難にあう場合も目立ちます▼しっかりと準備して自分の体力や技量に見合った登山を。山岳団体は呼びかけます。オーバーユース(過剰利用)が問題となっている富士山では、悪天候や体調不良にもかかわらず無理に登って遭難する事故が相次いでいます▼きょうは山の日。山に親しむといっても、十分な休みや時間がとれないのが現実です。準備や余裕をもった計画は、山歩きを安全に楽しむうえで欠かせません。無事に帰ってくるまでが登山。自らの可能性を広げる自由な時間を求めるたたかいはここにも。