2024年8月6日(火)
きょうの潮流
名もなく、道もなく青春もなく、勲章ももらわずに、みんな木の葉のように焼かれて、消えていった…。妹を亡くし、子を亡くし、自身の命も削られた名越操(なごや・みさお)さんは、そうつづりました▼1964年8月、広島の新日本婦人の会によって発刊された被爆体験集は、名越さんの手記から題名が付けられました。今年で58集となる『木の葉のように焼かれて』。一編一編から伝わってくるのは原爆のむごさ、被爆者の悲しみや怒り、平和への切望です▼これまで集めた証言は838人にのぼり、のべ400人近い会員がかかわってきました。当初は新婦人の各班にも被爆者が必ずいて、互いに泣きながら語り合い、聞き書きをしたといいます▼被爆の実相を訴えた『木の葉』は国内外の人びとに届けられ、学校の平和教育にも活用されてきました。後世への貴重な記録、次の世代へのメッセージとして▼新婦人という組織があったから、ここまで続けられたと現編集委員の平岡澄代さん。被爆国日本、被爆地ヒロシマから核廃絶を発信する役割が私たちにはあるはず、広島出身を口にしながら核兵器禁止条約に背を向ける岸田首相は許さないと▼被爆者と歩んだ60年。名越さんはその一歩に決意を込めました。「一体、誰が戦争をおこしたのか、そして、また、性こりもなく、誰が戦争を企(たくら)んでいるのか。いまこそ、この目でしっかりとみつめ、考え、まどわされず、明らかにして、平和を願うこの気持ちをみんなに伝えたいと思います」。それは今日も。








